佐々木麟太郎のスタンフォード大進学は「あっぱれ」 OBのマーティ・キーナートが同校の学業やスポーツ文化などを解説
花巻東高前の二宮金次郎像前で撮影に応じる佐々木麟太郎 photo by Jiji Press
高校通算140本塁打のスラッガー、佐々木麟太郎(花巻東高)のフルスカラシップ(学費全額対象の奨学金)による米国・スタンフォード大進学の発表が世間を驚かせている。
それもそのはず、スタンフォード大は「文武両道」を地で行く世界トップレベルの学校だからだ。同大の公式サイトによれば、これまでにオリンピック夏季大会だけで177名、計296個のオリンピックメダルを獲得し、2021年の東京五輪では競泳女子のケイティ・レデッキーの4(金2、銀2)を筆頭に現役を含めた同大出身者によって26個のメダルがもたらされた。プロスポーツでは、タイガー・ウッズ(ゴルフ)、ジョン・エルウェイ(アメリカンフットボール)、ジョン・マッケンロー(テニス)、マイク・ムッシーナ(野球、投手)などがいる。
学業面でもアメリカ東海岸のボストン近郊にある名門校・ハーバード大との対比で「西のハーバード」と呼ばれ、イギリス教育誌『タイムズ・ハイヤー・エデュケーション』発表の「世界大学ランキング」2024年版では2位と学業面でも秀でている(ちなみにハーバード大は4位)。
今回はそのスタンフォード大で自身も野球をプレーし、その後、日米のプロ野球球団で要職を担い、現在は東北楽天ゴールデンイーグルスやBリーグ・仙台89ERSのシニア・アドバイザー等を務めるマーティ・キーナート氏に佐々木の進学、スタンフォード大やアメリカの学生スポーツ文化等について話を聞いた。
【独自にスカウティングされていた可能性も】
―― 佐々木麟太郎選手がスタンフォード大へ行くというニュースに日本のファンは驚きましたが、マーティさんとしてはどう感じられましたか?
「僕もすごくびっくりしましたね。彼は賢いという評判があったけども、スタンフォードに入る門は狭いですから。一番びっくりしたのは、彼がどうやって入ることができたのかということ。普通の(学生と同じ)ハードルを越えて入ったわけではないと思います。
(ただし)彼も賢いから、ちゃんと、普通に勉強をすれば(授業に)ついていけますよ。学校側もチューター(家庭教師)をつけて彼がついていけるようにするはずです」
―― 例えば山本由伸投手がまだ1球もメジャーリーグで投げていないにもかかわらず、ロサンゼルス・ドジャースと巨額の長期契約を結びましたが、それは彼の球の回転数などさまざまなデータを見ての判断だったと聞きます。佐々木選手の場合はメジャーではなく大学野球です。なぜフルスカラシップ(学費全額免除)という高評価をスタンフォード大が下すことができたのでしょうか?
「それはもう、インターネットの時代ですから、映像を見て分析ができますよ。昔なら自分の目で見てみないとわからないところでしょうが、今はいろんなテクノロジーを使って分析できるようになっています。
それに、彼はあんなに大きいですが、スイングが良くなかったら獲りません。もしかしたら彼自身を(実際に)スカウティングをしていたかもしれない。スタンフォードの卒業生は日本にもたくさんいますし、「Bird Dog Scout(パートタイムの現地スカウト)」みたいな人が日本にいて、彼を生で見てビデオとレポートを送ったという可能性も十分にあると思います」
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プロフィール
永塚和志 (ながつか・かずし)
スポーツライター。前英字紙ジャパンタイムズスポーツ記者。
Bリーグ、男女日本代表を主にカバーし、2006年世界選手権、 2019W杯等国際大会、また米NCAAトーナメントも取材。 他競技ではWBCやNFLスーパーボウル等の国際大会の取材経験 もある。著書に「''近代フットボールの父'' チャック・ミルズが紡いだ糸」(ベースボール・マガジン社) があり、東京五輪で日本女子バスケ代表を銀メダルに導いたトム・ ホーバスHC著「ウイニングメンタリティー コーチングとは信じること」、川崎ブレイブサンダース・ 篠山竜青選手 著「日々、努力。」(ともにベースボール・マガジン社) 等の取材構成にも関わっている。