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「今年ダメなら野球をやめる」DeNA・山本祐大の弟が「ギータ流スイング」で挑むNPBへの道

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahirio

 ギータみたいなスイングだな......。

 打撃ケージに入った左打者が、バットを一閃する。「ステイバック」と呼ばれる後ろ重心のスイングは、柳田悠岐(ソフトバンク)を彷彿とさせた。

 打球は高い放物線を描き、右翼スタンドを越えて「バコッ!」と弾む。試合前の短時間の打撃練習にもかかわらず、その左打者は2球連続を含む4本のサク越え弾を放り込んでみせた。

茨城アストロプラネッツの山本仁 photo by Kikuchi Takahiro茨城アストロプラネッツの山本仁 photo by Kikuchi Takahiroこの記事に関連する写真を見る

【兄とは違うプレースタイル】

 6月26日、ベルーナドームでの西武三軍とBCリーグ選抜の交流戦。試合前のBCリーグ選抜の打撃練習中、この左打者の強烈な打球が目に留まった。

 選手リストの名前を確認すると、山本仁(茨城アストロプラネッツ)とある。身長182センチ、体重92キロ。京都翔英高、アスミビルダーズを経て、今季に茨城へと入団した右投左打の外野手だ。2001年8月8日生まれ、今年で24歳になる。

 傍らにいた独立リーグに詳しい同業者が、「山本祐大(DeNA)の弟ですよ」と教えてくれる。

 山本祐大は滋賀ユナイテッドBC(現在は活動休止)から2017年ドラフト9位指名を受け、DeNAに入団。昨季は正捕手に定着し、規定打席未到達ながら打率.291をマーク。ベストナインとゴールデングラブ賞を受賞し、今や球界を代表する捕手になった。

 言われてみれば、祐大も京都翔英の出身である。だが、もし教えてもらわなければ、弟とは気づかなかっただろう。それくらい兄弟でプレースタイルが異なっている。

「顔は似てるってよく言われるんですけど、プレースタイルは全然違いますね」

 山本仁はそう言って、はにかんだ。大きな体とは裏腹に、穏やかな表情。華々しい世界に身を置く兄について触れられたくない可能性も想定していたが、山本は「全然聞いてもらって大丈夫ですよ」とオープンだった。3歳上の兄との関係は良好だという。ただし、山本はこんな注釈を付け足した。

「家族として家にいたら、やさしくていいお兄ちゃんです。でも、野球選手としては、自分が目指している舞台にいる人なので。負けたくないという思いが強いです」

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著者プロフィール

  • 菊地高弘

    菊地高弘 (きくち・たかひろ)

    1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。

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