錦織圭はジュニア時代も今も変わらない 引退した杉山愛の助言も「あ、本当だ」と素直に耳を傾ける
錦織圭という奇跡【第44回】
杉山愛の視点(1)
◆01松岡修造の視点>> ◆02細木秀樹の視点>> ◆03奈良くるみの視点>>
◆04石光孝次の視点>> ◆05玉川裕康の視点>>
◆06デイビッド・ロウ&マット・ロバーツの視点>> ◆07土居美咲の視点>>
◆08伊藤竜馬の視点>> ◆09喜多文明の視点>> ◆10中尾公一の視点>>
◆11富田玄輝の視点>> ◆12内山靖崇の視点>> ◆13添田豪の視点>>
「ジュニア時代の彼のプレーを見て、『こんなにワクワクするテニス、見たことないな!』って。それが、圭の試合を初めて生で見た時の第一印象でした」
20年前の日を思い出すと、まるであの時の「ワクワク」も蘇るかのように、杉山さんの顔に笑みが広がり、声が弾む。
現在はBJKカップ日本代表監督を務める杉山愛さん photo by Kyodo Newsこの記事に関連する写真を見る シングルス最高8位、ダブルスは世界1位。打ち立てた62大会連続グランドスラム出場のマイルストーンは、当時の世界新記録としてギネスにも認定された。
その杉山さんは現役時代、自身が出ていたグランドスラム大会で、ジュニア部門に出場する錦織圭のプレーを見た。
ジュニア部門が始まるのは、大会が折り返し地点に差しかかる頃。プレーヤーズラウンジにいる選手の数も日に日に少なくなるなか、勝ち残っている杉山さんは、錦織少年と会場で顔を合わせた。
「コートの外では、すごくシャイ」というのが、杉山さんが抱いた第一印象。それでも、どこか人懐っこいところもある錦織とは、「よくご飯を食べに行った」という。
もっとも杉山さんにとって錦織は、初めて会う以前から、その名をよく聞く存在だった。
「私も関わっていたジュニア大会に、圭も出ていたので名前は知っていました。彼が13歳くらいの頃だったと思います。『すごい選手がいる』と評判でしたし、私の母も、圭のお父さんから相談を受けていたりしたんです」
杉山さんの母・芙沙子さんは、杉山さんのコーチでもあり、自身が運営するテニスアカデミーでジュニア育成にもあたっていた。
その芙沙子さんに、錦織の父・清志さんは、我が子の進路について助言を求めることがあったという。日本人の先駆者が少ないなか、清志さんにとって杉山母娘は、数少ない羅針盤だった。
「ちょうど、圭の進路をどうするか、ベースをどこに置こうかと悩んでいる時に、清志さんが相談した相手が母でした。
母はその時、清志さんに『大きな器を用意してあげてください』と言ったそうです。小さなグラスから水がこぼれてから、別の器に移すのは大変。そういう意味でも、あふれる前に大きな器を用意してあげたほうがよい。
圭というすばらしい素材を育てるには、彼にふさわしい環境を用意することが大切だというようなことを、母が清志さんに伝えたと聞きました。実際に、圭がアメリカのIMGアカデミーに行った理由のひとつとして、母の助言があったようです」
1 / 4
著者プロフィール
内田 暁 (うちだ・あかつき)
編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。2008年頃からテニスを追いはじめ、年の半分ほどは海外取材。著書に『錦織圭 リターンゲーム』(学研プラス)、『勝てる脳、負ける脳』(集英社)など。














