サッカー日本代表の新戦力が機能しないのはなぜか ベネズエラ戦で露呈した「メカニズムの欠如」
1-1で迎えた終了間際、ベネズエラにPKが与えられるか否かでVARになった。ところがオーストラリアの主審、ティモシー・ダナスコスさんは一転、日本にPKを与えた。その前のシーンで久保建英がベネズエラのペナルティエリア内で倒されたプレーを優先。こちらにPKを与えたのだ。滅多に起きない、わかりにくい事象である。にもかかわらず、場内への説明はなかった。電光板には映像はもちろん、文字情報としても紹介されなかった。上田綺世がどさくさに紛れるようにPKを決め、試合は日本の逆転勝利となった。
後半のアディショナルタイムはわずか2分。ベネズエラ側がアウェーのハンデに怒り心頭になるのも無理はなかった。オスワルド・ビスカロンド監督は、試合後の会見で当然のように異を唱えた。冷静さを保ちながら論理的に反論する姿には好感さえ抱かせた。
その後、会見場に現れた森保一監督は、不満を抱える相手側を気遣うこともなく、勝利を喜んだ。「勝ち癖をつけておくことは大事だ」と、勝利にこだわる強い姿勢を隠そうともしなかった。このベネズエラ戦の逆転勝ちを、これ以上、喜べない勝利も珍しいと断じたくなった筆者との間には、大いなる見解の相違があった。
代表デビューとなる小久保玲央ブライアン、中野就斗、熊坂光希、齋藤俊輔が先発したベネズエラ戦 photo by Daisuke Nakashima なかでも問題視したいのは、上田綺世、久保建英、伊東純也、田中碧、鈴木彩艶といった主力組を、後半の冒頭から早々に投入したことだ。ハーフタイムに引っ込めたのは、鎌田大地、後藤啓介、佐藤龍之介、齋藤俊輔、小久保玲央ブライアン。鎌田を除けば代表経験の浅い若手たちだった。森保監督は、彼らを早々に引っ込めた理由を問われると、逆に、試合の後半ではなく先発で使ったことを「そのほうが彼らのためになる」と自画自賛した。
だが、このベネズエラ戦は4連戦の中の2戦目で、強度のレベルで言えば3番目か4番目だろう。メインとなる試合は、初戦のウルグアイ戦であり3戦目のエクアドル戦である。ベネズエラ戦は本来、少し落としたメンバーで戦うべき試合なのである。それは森保監督もわかっていたはずだ。若手を多く先発させた理由はそこにあったはずなのである。後半途中から交代で出場させるだけでは、ローテーションはうまく回らないのだ。また、そうでないと4連戦は乗りきれない。騙されてはいけない。
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著者プロフィール
杉山茂樹 (すぎやましげき)
スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2026年北中米大会で12回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

