フィギュア解説で町田樹が気になる「演技の世界観」という表現 「空虚で形骸化した言葉になっている」
連載:NEXT STAGE~トップアスリートのセカンドキャリア
町田樹(フィギュアスケート)インタビュー@中編
◆町田樹・前編>>引退後に研究者となった「プロフェッサー」の膨大な仕事量
◆町田樹フォトギャラリー>>
フィギュアスケートの解説が高く評価される一方で、町田樹さんは研究者を本分としている。言葉遣いや、解説へのスタンスも、研究者としての仕事と切り離すことはできない。
解説者であり研究者である町田さんは、どのようにその両者を行き来しているのか。
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町田樹さんのフィギュアスケート解説は高い人気を誇っている photo by Miki Sano── フィギュアスケートの大会で解説を務める際、準備のために膨大な映像を見ると思います。時間短縮のために早送りで見ることはないのでしょうか?
「絶対にしないですね。自分が血を吐くような練習を重ねてきたパフォーマンスを、『タイパだから』と早送りされたら、私だったら複雑な気持ちになるので、やりません。
それに、解説者にとってはリアルな時間感覚が非常に大事です。話すには時間がかかる。その話すテンポと演技のテンポを合わせなければいけない。2017年に解説者としてデビューした時は、準備しているから語りたいことがいっぱいあって、ひとつのジャンプについて丁寧に話していたら、もう次のジャンプが終わっていることがありました(笑)。そうした自分の解説をオンエアで客観的に聞いて、大反省した経験が私にはあります。
たとえば、4回転を跳んで降りるのは0.5秒くらいです。アスリートは1秒よりも短い世界で時間を感じている。一方、私たちはたった30文字程度の言葉を発するのに、5秒弱かかります。わずか1秒がものをいう世界で懸命に競技している選手たちのパフォーマンスを語るためには、やはり言葉を取捨選択して、なるべく切り詰めながら、でも最大限説明するという極めて高度な能力が必要なんです」
── 言葉を切り詰めると、よく使われる表現に頼りがちにもなりますね。
「フィギュアの解説に限って言うと、気になるのは『演技の世界観』という表現です。世界観は、キリスト教や仏教の世界観など、もっと壮大なスケールの世界に対する統一的な物の見方を指す言葉だと考えています。しかしフィギュアスケーターは、そうではなく、もっと具体的な何かを表現している。その表現に『世界観』という言葉はそぐわないということがひとつ。
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著者プロフィール
了戒美子 (りょうかい・よしこ)
1975年生まれ、埼玉県出身。2001年サッカー取材を開始し、サッカーW杯は南アフリカ大会から、夏季五輪は北京大会から現地取材。現在はドイツを拠点に、日本人選手を中心に欧州サッカーを取材中。著書『内田篤人 悲痛と希望の3144日』(講談社)。

