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フィギュア解説で町田樹が気になる「演技の世界観」という表現 「空虚で形骸化した言葉になっている」 (3ページ目)

  • 了戒美子●取材・文 text by Yoshiko Ryokai

 たとえばサッカーの場合、私はにわかファンですから、選手同士が交錯し、白熱した勝負を繰り広げていたとしても、彼らのプレーの意図や戦略などは残念ながらほとんど読み取れません。実況者や解説者が『こういう戦略で動いている』『こうパスがつながったからチャンスがある』と伝えることで、初めて文脈を読み取れる。視聴者の脳裏に文脈を立ち上げ、見方を提案する。大事な仕事だと思います」

── 競技を経験していない人が語ることについては、どう考えていますか。

「経験していない人にも語る資格はありますし、経験していないからこそ語れることもあると思っています。フィギュアスケーターには当たり前で、すごいと思っていないことが、一般の方の目にはものすごいことに映る場合があります。経験が身に刻まれているからこそ、気づけないことも確かにあるんです。また、たとえ経験がなくとも、研究者の方が精緻に研究し、時に経験者よりも豊かに、かつ的確に語っている事例を私はいくつも知っています。

 逆に、経験していなければ語れないこともあります。自分の強みと弱みを自覚して、強みを生かし、弱みを克服したり、相殺できる別の強みを手に入れたりして勝負していけば、誰にでも語る資格があると思っています」

── 最近は、解説自体にも注目が集まっていますね。

「ミラノ・コルティナでいえば私や高橋成美さん、サッカーワールドカップでいえば本田圭佑さんなど、解説のあり方も変わってきていますよね。いろんなメディアが出てきて、解説者も熾烈な争いをしています。競争原理が働くから、人は努力する。努力するインセンティブがもたらされ、解説の質が向上したり、バリエーションが増えたりするのは、実況・解説界にとってもいいことだと思っています」

── 視聴者からはどんな反応があるとうれしいですか?

「選手の魅力がよりわかった、演技の見方がわかった、その選手の背景をよく理解したうえで演技を見られた。そう思っていただけたらうれしいですね。私たちの仕事は選手のパフォーマンスを伝えることなので、解説者が目立ってもしょうがない。選手の演技をよく伝えられれば、仕事はうまくいっていると考えています」

(つづく)

◆町田樹・後編>>スタートは「報告・連絡・相談」すらできなかった
◆町田樹フォトギャラリー>>


【profile】
町田樹(まちだ・たつき)
1990年3月9日生まれ、神奈川県出身。3歳でフィギュアスケートを始め、2006年に全日本ジュニア選手権で優勝。関西大学進学後に頭角を現し、2013年のスケートアメリカ、ロステレコム杯を制した。2014年ソチオリンピック男子シングルで5位入賞。同年の世界選手権では羽生結弦と0.33点差の銀メダルを獲得した。2014年に競技生活を終え、研究者を目指して大学院へ進学。2018年にプロスケーターとしての活動も終えた。2020年に早稲田大学大学院で博士号(スポーツ科学)を取得。現在は國學院大學人間開発学部健康体育学科准教授を務め、スポーツ科学者、著述家、フィギュアスケート解説者として活動している。身長162cm。

著者プロフィール

  • 了戒美子

    了戒美子 (りょうかい・よしこ)

    1975年生まれ、埼玉県出身。2001年サッカー取材を開始し、サッカーW杯は南アフリカ大会から、夏季五輪は北京大会から現地取材。現在はドイツを拠点に、日本人選手を中心に欧州サッカーを取材中。著書『内田篤人 悲痛と希望の3144日』(講談社)。

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