バルセロナを復活させたフリック流「妥協しない」マネジメント たった2分の遅刻も許さない
名将たちの人心掌握術(11)
ハンジ・フリック
2024-25シーズンからバルセロナを率いるドイツ人監督ハンジ・フリックは、厳格なタイプの指導者と言えるだろう。行動に対して規律を重んじる。自らに強い信念を持ち、選手にもプロフェッショナリズムを求めるリーダーだ。
フリックはケガもあって、28歳で現役を引退している。その後、指導者として頭角を現し、ホッフェンハイムを3部に昇格させ、ドイツカップではベスト8に進出した。その後は欧州では珍しく、ザルツブルク、ドイツ代表などで10年以上もアシスタントコーチを経験。この間、ドイツ代表ヨアヒム・レーヴ監督の参謀として、2014年ブラジルワールドカップ優勝に貢献した。
2019-20シーズンにはバイエルンでコーチになっていたが、ニコ・コヴァチ監督が早々と解任されるとチームを率いるようになり、ブンデスリーガ、ポカール(ドイツカップ)、チャンピオンズリーグ(CL)の3冠を達成している。超攻撃的サッカーが信条で、監督になってからは振りきった采配を見せるようになり、リスク覚悟でスペクタクルな戦いを体現した。
もっとも、その理念を押し通す性格は裏目にも出ている。カタールワールドカップではドイツを率いて優勝を目指したが、日本にまさかの逆転負けを喫してグループリーグで敗退。攻め続けながら追加点が奪えず、一瞬の隙を突かれる形で失点を繰り返した。翌年のフレンドリーマッチでも日本に背後を取られる形で失点して敗れており、それを機に解任の憂き目に遭った。
バルセロナの監督に就任以来、ラ・リーガ2連覇中のハンジ・フリック photo by Daisuke Nakashima〈妥協しない〉
それは表裏一体で、彼のマネジメントの芯にあるものかもしれない。
フリックはバルサでも信念に従い、危険を承知でハイプレス、ハイラインを指示している。少しもラインを下げることを許さない。その執念がスタイルを確立した。
2025-26シーズンもフリック流の采配が目立ったが、それを成立させるためには厳しさも欠かせない。たとえばCL開幕戦でマーカス・ラッシュフォードが「天才」の名をほしいままにして2得点したが、次のラ・リーガ、ヘタフェ戦では先発を外した。その理由が、「ホテルでのチームミーティングへの遅刻」だった。
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著者プロフィール

小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

