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流れを掴みながらも敗北。
錦織圭がナダル戦で得た収穫 (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki   photo by Getty Images

 試合の趨勢を決めかねない危機を切り抜けたナダルは、次の錦織のサービスゲームで、集中力のレベルを一段引き上げた。30−30の場面で錦織が放ったコーナーぎりぎりに刺さるストローク――ラインパーソンは、素早く両手でラインを差して『イン』であると主張するが、ナダルは片手を掲げて『チャレンジ』の意思を示す。はたして巨大スクリーンに流れた再生ビデオは、ボールがわずかにラインを外したことを映し出した。

 このチャレンジ成功により、迎えたナダルのブレークポイント。強打に押された錦織の返球がネットに掛かったその瞬間、ナダルは激しく吠え、観客たちは熱狂的に彼の名を叫んだ。沸き起こる「ナダル・コール」が、過去にこの地で3度トロフィーを掲げた元世界1位を、激しく後押しし始めたのだ。

 この1ゲームを機に、ナダルのストロークは伸びを増す。ファーストサーブの確率も高く、スピンとスライスを交えながらコーナーに打ち分けられる巧みさの前に、錦織のリターンは鋭さを欠いていった。

「ブレークバックしたあのゲームは、とても、とっても重要な局面だった」と、のちにナダルは述懐する。

 対する錦織も、あのゲームを大きなターニングポイントとして振り返った。

「気持ちを引きずることはなかったですが、大事なゲームだったのに追いつかれて......。一番重要なゲームだった。しかも風上だったので、そこがよくなかったですね」

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