2016.03.18

「苦手」なコートで「苦手」なイズナーを
撃破した錦織圭の戦略

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki   photo by AFLO

「ベースラインの後ろが、かなり狭いな……」

「スタジアム2」に足を踏み入れた瞬間、錦織圭はそんなことを思っていた。

フルセットの末、今大会自身初のベスト8進出を果たした錦織圭 アメリカ・カリフォルニア州インディアンウェルズで開催中のマスターズ大会「BNPパリバオープン」。錦織とアメリカ人ナンバー1のジョン・イズナーで競われる4回戦の舞台には、「スタジアム2」が用意された。そこは、収容人数8000人を誇るアリーナではあるが、センターコートに比べるとベースラインとフェンスの間、そしてサイドラインから客席までの距離が、かなり狭い。

 そのことは、この日の錦織にとって、とても重要な意味を持った。

 対戦相手のイズナーは、身長208センチの超大型選手。最大の武器は、2階から打ち下ろすかのような角度のあるサービスで、そのスピードはツアー記録となる時速157マイル(約252キロ)を2週間前に叩き出したばかりである。しかも、イズナーは超高速サーブに加え、バウンドした後に2メートル以上跳ねるスピンサーブも携えている。昨年初めてイズナーと対戦し、その脅威を目の当たりにした錦織は、「あんなに跳ねられては物理的に届かないので、返すのは不可能」とうなだれたほどであった。

 通算3回目となる今大会での顔合わせにおいては、さらに錦織に不利な条件が重なった。岩砂漠の中央に人工的に作られた街「インディアンウェルズ」の気候やコートは独特で、透明度の高い乾いた空気はボールのスピードを速めさせる。ところが、ひとたびバウンドすると、ザラついたコートにボールは食い込み、急激に高く跳ねるのである。このような条件は、長身でサーブを得意とする選手に有利に働く。