「倒産寸前の会社」だったTリーグがV字回復。約6億の赤字を黒字転換させたキーマンが語る「当たり前の解答」の意味 (3ページ目)

  • 佐藤主祥●取材 interview by Sato Kazuyoshi  text by Sportiva
  • 木鋪虎雄●撮影 photo by Kishiku Torao

――3シーズン目から卓球版マイナンバーと言われる「Tid」を導入しましたが、これはどのようなものでしょうか。

 私が就任した2シーズン目から実施に向けて進めていたのが、このTidです。登録することによって、Tリーグのチケットやグッズ購入をスムーズに行なえたりするものです。すでにこのようなIDを実施しているスポーツ団体やリーグでは、観客やファンが登録するIDだったり、プレーする人たちが登録するIDだったりと、ファンとプレーする人たちのIDは分かれていました。

 実は卓球はDo層、プレーする人たちが多いスポーツなんです。日本卓球協会登録者が30万人以上(2021年データ)いて、週1回卓球をやっている人が100万人いるというデータもあります。これは非常に特徴的なことです。だから、Tidではこのプレーする人たちとTリーグファンを融合させたプラットフォームを作ろうと考えました。

 現在Tidが連携しているのは、「チケット」、「オンラインショップ」、「申し込み・キャンペーン」、「来場スタンプ」などで、決済機能も持たせています。たとえばファンイベントを開催する際に、Tidから申し込んで、事前に決済をしていただければ、会場に行った時に自分固有のQRコードを管理側の端末で読み込ませるだけで済みます。我々もファンも現場で現金をやり取りする手間が省けてとてもいい仕組みとなっています。

 それからプレーする人たちへのアプローチも考えて、一般の方々が参加する卓球大会の運営サポートサービスを行なう「P4MATCH」(ピーフォーマッチ)と業務提携しました。これは大会エントリー&決済から当日の進行まで、ワンストップで提供するウェブサービスで、卓球場を中心に小規模な大会をすでに700大会以上(2020年3月以降)サポートしている会社です。こことの提携により一般卓球愛好者のプレーする機会にも関わり、ゆくゆくは、このTidと連携を図る構想をもっています。

――Tid会員は現在どのくらいいらっしゃいますか。

 スタートして2シーズンが経過した状況で、今は3万人を超えています。今後は50万人、100万人を目指していきたいと思っています。

(後編に続く)

【Profile】
日下部大次郎(くさかべ・だいじろう)
同志社大学経済学部卒業。早稲田大学スポーツ科学学術院修士課程修了。日本興業銀行、みずほコーポレート銀行を経て、2005年に日本プロバスケットボールリーグの経営企画室ディレクターとしてリーグの立ち上げに関わる。その後、同リーグの東京アパッチ代表取締役、一般財団法人SS11 (競輪)事務局長、ヤマハ発動機ラグビー部アドバイザー、T.T彩たまスーパーバイザーなどを経て、19年7月にTマーケティング代表取締役社長に就任した。

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