【ワールドカップ】ハーランドだけではない! 爆発的攻撃力のノルウェー代表を象徴する超新星
西部謙司が考察 サッカースターのセオリー
第71回 アントニオ・ヌサ
日々進化する現代サッカーの厳しさのなかで、トップクラスの選手たちはどのように生き抜いているのか。サッカー戦術、プレー分析の第一人者、ライターの西部謙司氏が考察します。
ノルウェー代表がW杯欧州予選を快走。攻撃力爆発のチームにあって、ハーランド、セルロートと共に3トップの一角を担うのが、20歳のアントニオ・ヌサだ。
【北欧のネイマール】
アントニオ・ヌサのノルウェー代表デビューは2023年。現在20歳の左ウイングはマルティン・ウーデゴールとともに攻撃の創造性を担う存在になっている。
W杯欧州予選を快走中のノルウェー代表で活躍するアントニオ・ヌサ photo by Getty Imagesこの記事に関連する写真を見る スターベクIFのユースを経てエリテセリエン(ノルウェー1部)のトップチームに昇格したのが16歳。その後2021年にクラブ・ブルッヘ(ベルギー)に移籍。2024年からはドイツのライプツィヒでプレーしている。「北欧のネイマール」とも呼ばれるドリブラーだ。
右利きの左サイド、滑らかなドリブルはネイマールを連想させるところはあるが、ヌサは身長183センチとネイマールにしては大柄である。ドリブル自体もネイマールのトリッキーさはなく、むしろ三笘薫に近いかもしれない。緩急の利いたシンプルなドリブルが武器。カットインからのシュートに威力があり、右足からの精度の高いクロスボールも持っている。
ノルウェー代表はCFにマンチェスター・シティのアーリング・ハーランド、右にアトレティコ・マドリードのアレクサンダー・セルロート、左にヌサの3トップが鉄板。MFにはアーセナルのキャプテン、ウーデゴール。シティのオスカー・ボブも控えている。
W杯欧州予選は6戦全勝で29得点を叩き出している(10月11日時点)。モルドバ代表とのホームゲームのスコアは11-0だった。アウェーは5-0、イスラエルにはホームで5-0、アウェーで4-2。イタリアにはホームで3-0で勝利している。
得点力が図抜けているノルウェーだが、実はプレースタイルはほとんど変わっていない。律儀なラインコントロールによる完全ゾーンの4-5-1によるコンパクトな守備ブロックが特徴。この守り方だと、1トップの周辺は相手が自由にボールを出し入れできるので、ボールを奪うのには向いていない。そのかわりブロック内は強固で容易に侵入を許さないので失点はしにくい。
自分たちがボールを保持するのではなく、相手に持たせて奪い、カウンターアタックを狙う。この基本方針は全く変わっていないのだ。予選での大量得点もほとんどはカウンターからとっている。
戦術はほぼ同じなので、躍進の理由は主にアタッカーの質の変化である。
著者プロフィール
西部謙司 (にしべ・けんじ)
1962年、東京生まれ。サッカー専門誌「ストライカー」の編集記者を経て2002年からフリーランスに。「戦術リストランテ」「Jリーグ新戦術レポート」などシリーズ化している著作のほか、「サッカー 止める蹴る解剖図鑑」(風間八宏著)などの構成も手掛ける。ジェフユナイテッド千葉を追った「犬の生活」、「Jリーグ戦術ラボ」のWEB連載を継続中。





















































