マンチェスター・ユナイテッド史上最強チームの名脇役 マイケル・キャリックに名手シャビも憧れた (2ページ目)
【イングランド代表でもっと見たかった】
ロングボールに偏らず、丁寧なパスワークを強みとしたキャリックのスタイルは、そのウェストハムのアカデミーで培われたものだ。彼が10代のころのイングランド・フットボールは、キック&ラッシュを推す風潮も少なくなかった。だが、世間の流れに抗うように、自らの技を磨いていたという。
ウェストハムのレジェンドで、長短緩急のパスを自在に操っていたトレヴァー・ブルッキングに憧れていたのか、あるいはサウサンプトンの「異能」マット・ル・ティシエを意識したのか。いずれにせよキャリックのセンスは、10代のころから際立っていたようだ。
残念ながら、イングランド代表として特筆すべきキャリアは刻んでいない。ランパード、スティーヴン・ジェラードと同世代であり、代表の中盤センターはふたりの定位置だった。しかし、両雄並び立たず......。
ライバル意識はすさまじく、連係が整わない。殴り合いのケンカには至らなかったものの、試合中はもちろん、練習でも合宿中の食事でも、彼らが言葉を交わすことはほとんどなかった。
ともにボックス・トゥ・ボックスのMFで、豊富な運動量と強烈なミドルシュートを武器にしていた。同タイプが並んだ中盤はバランスが悪く、ワールドカップもヨーロッパ選手権も大失敗が続いた。
もし、キャリックを中盤に起用していれば、少なくともバランスは整ったに違いない。中盤の深めに位置し、戦局を読みながら相手の攻撃の芽を摘み取る。パスの散らし方も絶妙で、味方の足もとへ、スペースへと運び届ける。
キャリックは守備意識も高かった。押し込まれた際、ジェラードとランパードは相手FWにあっさり前を向かせたり、無謀なタックルでFKを与えたりしていたが、キャリックは密着し、パスコースも切っていた。当時のイングランド・フットボールにおいて、ジェラード&ランパードがアンタッチャブルだったとしても、キャリックを軽視しすぎた感は否めない。
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