プレミアリーグで異彩を放つグバルディオル マンチェスター・シティの次代を担うDFの能力とは? (3ページ目)
【シティでも異彩を放つフィジカルモンスター】
相手のレアル・マドリードは、チーム作りの点でシティとは対照的である。各ポジションに最高クラスの選手を獲得するのが大方針。個々の選手の実力は申し分ない。ただし、チームとして機能するまでにたいてい時間がかかる。
例えば、エムバペ、ヴィニシウス・ジュニオール、ロドリゴは3人とも左サイドを得意としている。普通のチームなら、この3人を集めるようなことはしないだろう。実力優先でポジションの重複など二の次というのは、1950年代からの伝統と言っていいかもしれない。だから整理がつくまで時間がかかることは多く、強いことは強いが宝の持ち腐れ感もつきまとう。
シティのような計画性がない。しかし一方で、選手頼みのレアル・マドリードの戦術には柔軟性があり、ポゼッションも、堅守速攻も、最高ではないかもしれないが高いレベルで対応できる。それで勝てそうもない試合を何度もモノにしてきている。緻密でないぶん応用ができるというか、個々の能力が高いのでつぶしが効くわけだ。
シティの場合、シティのサッカーをやるための選手構成になっていて、レアル・マドリードのように選手や状況に合わせて戦術を変えたりはしない。うまくいっていなくても、シティのサッカーをやめるわけにはいかない仕組みが出来上がっていて、やりきるしかなく、ある意味逃げ場がない。
対照的なチーム作りのシティとレアル・マドリード、どちらが正しいということはない。合理性からすればシティが優れているようにみえるし、レアル・マドリードのほうが前時代的で衰退しそうだが、現実はCL最多優勝を誇り、1950年代からずっと欧州トップに君臨している。
現在のシティはサイクルの終わりが突然来た状態なのかもしれないが、そのなかで若手のハーランド、グバルディオルは気を吐いている。このふたりはフィジカル的なモンスターで、その点でシティのなかで異彩を放つ存在でもあり、次のサイクルでも間違いなく中心選手としてチームを牽引していくはずだ。
著者プロフィール
西部謙司 (にしべ・けんじ)
1962年、東京生まれ。サッカー専門誌「ストライカー」の編集記者を経て2002年からフリーランスに。「戦術リストランテ」「Jリーグ新戦術レポート」などシリーズ化している著作のほか、「サッカー 止める蹴る解剖図鑑」(風間八宏著)などの構成も手掛ける。ジェフユナイテッド千葉を追った「犬の生活」、「Jリーグ戦術ラボ」のWEB連載を継続中。
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