プレミアリーグで異彩を放つグバルディオル マンチェスター・シティの次代を担うDFの能力とは?
西部謙司が考察 サッカースターのセオリー
第36回 ヨシュコ・グバルディオル
日々進化する現代サッカーの厳しさのなかで、トップクラスの選手たちはどのように生き抜いているのか。サッカー戦術、プレー分析の第一人者、ライターの西部謙司氏が考察します。
今回は、今季苦戦が続くマンチェスター・シティのなかでも、守備、組み立て、決定機作りと、多彩な能力を発揮して奮闘しているDFヨシュコ・グバルディオルを紹介します。
【左SBでビルドアップし、前線で決定機に絡む】
ニックネームが「ペップ」だった。グアルディオラと名前が似ているからだが、現在はマンチェスター・シティで監督と選手の間柄になっている。
マンチェスター・シティで異彩を放つ活躍のグバルディオル photo by Getty Imagesこの記事に関連する写真を見る「小さなペップ」と呼ばれていたころのヨシュコ・グバルディオルはMFのセンターなどいくつものポジションをこなしていて、そのころはグアルディオラと似たところもあったのかもしれない。15歳でセンターバック(CB)にコンバート。それからビッグクラブが関心を寄せる存在になった。
ディナモ・ザグレブ、RBライプツィヒを経て、シティに移籍したのが2023-24シーズン。移籍金はDFとしては破格の7700万ポンドだったと言われている。19歳でクロアチア代表としてユーロ2020の大舞台を経験し、2022年カタールW杯ではもはや守備の重鎮。左サイドバック(SB)もこなせる器用さもあるレフティだ。
185㎝、80㎏の偉丈夫。スピードがすばらしくパワーも抜群。ボールコントロールも巧みで戦術眼も優れている。全く欠点のないパーフェクトなDFだ。
シティでは左SBで起用されているが、普通のSBとは違っている。グアルディオラ監督がバイエルンでやって広まった「偽SB」だからだ。
今やインサイドに移動してボランチ化するSBは珍しくなく、「偽」とつけるのが不自然なくらいだが、バイエルンでダビド・アラバがこれをやり始めた時は前例がなかった。アラバはグアルディオラ監督が来る前からバイエルンの左SBだったが、オーストリア代表ではMF。その後CBになっているが、元のポジションはMFだった。偽SBとしての適性があったわけだ。
グバルディオルはプロとしてはずっとDFだが、偽SBとしての能力は高い。ペップ得意の魔改造と言える。今やグバルディオルはMFとしてのビルドアップだけでなく、前線近くに飛び出して決定機を作り出し、自ら得点も決めるようになった。
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著者プロフィール
西部謙司 (にしべ・けんじ)
1962年、東京生まれ。サッカー専門誌「ストライカー」の編集記者を経て2002年からフリーランスに。「戦術リストランテ」「Jリーグ新戦術レポート」などシリーズ化している著作のほか、「サッカー 止める蹴る解剖図鑑」(風間八宏著)などの構成も手掛ける。ジェフユナイテッド千葉を追った「犬の生活」、「Jリーグ戦術ラボ」のWEB連載を継続中。