フランス、どこよりも正統的な攻撃サッカーで決勝へ。日本代表は「美しい敗者」モロッコを目指せ (4ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by JMPA

 2-0とする追加点が決まったのは後半34分。得点者は交代で入ったランダル・コロ・ムアニだったが、ゴール前で8割方、お膳立てをしたのはエムバペだった。

 エムバペ対メッシ。決勝はパリ・サンジェルマンに所属するふたりの対決であるかのように報じられるだろうが、フランスにはもうひとり、グリーズマンという文字通りの10番がいる。彼がいる分だけ、フランス有利。筆者にはそう映る。

 6分と表示されたロスタイム。モロッコは交代で入ったヤヒヤ・アティヤット・アラーが左サイドを強引にえぐる。その折り返しをアゼディン・ウナヒがシュート。さらにそのこぼれをアブデルザラク・ハムダラーがシュート。決まってもおかしくないチャンスを掴んだ。

 強者フランスに最後まで正々堂々と撃ち合うその姿勢に、周囲の日本人記者も感激しきりだった。日本代表にもこうした終わり方をしてほしかった。誰かが呟く声もその中に混じっていた。

「W杯は敗れ方を競うコンテスト」とは筆者の持論である。勝者はわずか1チーム。他の31チームはすべて敗者だ。優勝チームがすばらしいのはわかっている。見解が分かれるのは美しい敗者だ。そのナンバー1はどこか。2050年までに協会はW杯で優勝する目標を立てているらしいが、そんな途方もない話をする前に、目標にするべきは、世界ナンバー1の敗者だ。「目指せ、モロッコ」との思いを強くしながら、アル・ベイト・スタジアムをあとにした。

【著者プロフィール】杉山茂樹(すぎやま・しげき)
スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

★中村俊輔選手との鼎談全文(合計33ページ)収録★
↓↓↓↓↓↓↓↓
webスポルティーバの大人気対談
「中村憲剛×佐藤寿人 日本サッカー向上委員会」が一冊の本になった!

 書籍名は「ケンゴとヒサト サッカー人生以外も役に立つサッカーの話」

 ふたりが願う「日本サッカーのさらなる向上」を実現するため、さまざまなテーマに沿って対談形式で本音をぶつけあう。また、カタールワールドカップ直前企画として「ふたりの思い出のワールドカップこぼれ話」、さらにはふたりが熱望した元日本代表MF中村俊輔選手を招いて豪華な「スペシャル鼎談」も収録。プロとして20年近く現役を続けられたふたりの言葉は、「サッカー以外の人生」にもきっと役に立つ。

<中村憲剛さんからのコメント>
「長く第一線でやれたのには理由があります。その要因を紐解くことは、サッカーだけではなく、おそらくサッカー以外の社会や組織にも当てはまること。その『ヒント』になるようなものが、この本には詰められていると思います」

<佐藤寿人さんからのコメント>
「僕らはスポーツの世界で経験してきたことを話していますけど、それをうまく変換して『自分事』として捉えていただき、それぞれの環境で生かしてもらえたら。サッカーをやってきたなかで学んだことは、人生にも役立つんです」

【書籍名】 ケンゴとヒサト サッカー人生以外も役に立つサッカーの話
【発 行】 集英社
【発 売】 2022年11月14日(月)
【定 価】 本体1,700円+税

◆ご予約はこちらから>> 「集英社・書籍案内」 「Amazon」 「楽天ブックス」


【profile】
中村憲剛(なかむら・けんご)
1980年10月31日生まれ、東京都小平市出身。久留米高校から中央大学に進学し、2003年にテスト生として参加していた川崎フロンターレに加入。2020年に現役を引退するまで移籍することなく18年間チームひと筋でプレーし、川崎に3度のJ1優勝(2017年、2018年、2020年)をもたらすなど黄金時代を築く。2016年にはJリーグMVPを受賞。日本代表・通算68試合6得点。ポジション=MF。身長175cm、体重65kg。

佐藤寿人(さとう・ひさと)
1982年3月12日生まれ、埼玉県春日部市出身。兄・勇人とそろってジェフユナイテッド市原(現・千葉)ジュニアユースに入団し、ユースを経て2000年にトップ昇格。その後、セレッソ大阪→ベガルタ仙台でプレーし、2005年から12年間サンフレッチェ広島に在籍。2012年にはJリーグMVPに輝く。2017年に名古屋グランパス、2019年に古巣のジェフ千葉に移籍し、2020年に現役を引退。Jリーグ通算220得点は歴代1位。日本代表・通算31試合4得点。ポジション=FW。身長170cm、体重71kg。

フォトギャラリーを見る

4 / 4

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る