【ワールドカップ】優勝候補筆頭のフランスはなぜ敗れたのか 「最強の個」を集めたスター軍団の落とし穴
ワールドカップ各国のカタチ──現代戦術と代表チームの葛藤
VOL.8:フランス
世界のサッカーは、ポジショナルプレーの普及によるビルドアップの進歩と、それに伴うハイプレスの普及で、全員守備が必須な時代に突入しようとしている。しかし、ワールドカップを戦う代表チームは、それぞれ特別な国民的スターを抱えているために、全員守備に舵を切れない事情がある。
ひとりのスターを残りのフィールドプレーヤーで支える「1+9」か、それともスターを入れない「10」か。強豪国それぞれの現状を探る。
【スター軍団はなぜ敗れたのか】
フランスは優勝候補筆頭だった。個々の能力は傑出していて、結束力もあった。しかし、準決勝でスペインに0-2。「完敗」と報じたメディアも多い。
今大会圧倒的に強く見えたフランスだったが、準決勝でスペインに敗れた photo by JMPAこの記事に関連する写真を見る だが、そこまで差のある内容ではない。スペインの先制点はPKによるもので、PKはリュカ・ディニュがボールの代わりにラミン・ヤマルを蹴ってしまったから。それまでは一進一退の流れだった。
スペインの2点目も唐突に決まっている。ペドロ・ポロがダニ・オルモとのワンツーから決めた形は鮮やかだったが、スペインはそれまでさほど決定機を作れていなかった。むしろ、フランスの守備陣が全員ボールウォッチャーになっていて、ペドロ・ポロをフリーにしてしまったミスによる失点である。ふたつのエラーによって落とした試合だった。
ただ、スペインは終始、自分たちのリズムでプレーしていた。FIFAランキング2位、37戦連続無敗はイタリアと並ぶ世界記録、今大会7試合1失点。
どの試合でも同じなのだが、実はスペインにそこまで"強者感"はない。記録ほど圧倒的には見えない。だが、どんな相手でも自分たちのサッカーができる。ボールをコントロールし、試合をコントロールできる。フランスが相手でも、それは同じだった。
フランスはスペインに彼らのサッカーをさせなければ勝てたはずだが、それは"最強の個の集団"であるフランスをもってしても不可能だったわけだ。
スペインに彼らのサッカーをさせない方法は自明で、ボールを保持させなければいい。フランスはマンツーマンで抑え込んでいく構えを見せていた。しかし、キリアン・エムバペやウスマン・デンベレが俊足を生かして追ってもボールの速度には勝てず、スペインのビルドアップを寸断するには至らなかった。
それでも、まだフランスに勝ち筋は残されていた。ブロック守備は強固で、奪ってからのカウンターアタックは世界最高だからだ。スペインは相手に守備を固められ、さらにヤマルを抑え込まれると得点に苦労する。エムバペ、デンベレ、ブラッドリー・バルコラでカウンターを仕掛ければ、ボールを保持されても試合に勝つチャンスはあった。だが、先制されたことで、これも使えなくなってしまった。ヤマルを抑えることもできていなかった。
フランスはフランスらしさを発揮しきれていない。試合は常に相対的なもので、スペインがスペインらしくプレーしていたからだ。
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著者プロフィール
西部謙司 (にしべ・けんじ)
1962年、東京生まれ。サッカー専門誌「ストライカー」の編集記者を経て2002年からフリーランスに。「戦術リストランテ」「Jリーグ新戦術レポート」などシリーズ化している著作のほか、「サッカー 止める蹴る解剖図鑑」(風間八宏著)などの構成も手掛ける。ジェフユナイテッド千葉を追った「犬の生活」、「Jリーグ戦術ラボ」のWEB連載を継続中。






















































