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【ワールドカップ】優勝候補筆頭のフランスはなぜ敗れたのか 「最強の個」を集めたスター軍団の落とし穴 (3ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Kenji Nishibe

【1998年以来のアイデンティティ】

 フランスのアイデンティティは個の強さ、特にフィジカルの優位性である。それが明確に表れるようになったのが、1998年のワールドカップ初優勝。移民系選手の台頭が要因だ。

 もともと、移民系選手はいた。1958年大会で3位になった時のレイモン・コパ、ジュスト・フォンテーヌ、1980年代のミシェル・プラティニ、ジャン・ティガナ、マリユス・トレゾールなど、中心的な存在でもあった。ただ、1998年以前のフランスは技術的に優れていたが線の細いチームで、1998年以降のパワーは持っていなかった。アフリカ系選手の増加が、その違いを生んだ。

 世界に先駆けて育成を組織化した結果、黒人選手が台頭した。以前もいたのだが、育成年代を担当していたレイモン・ドメネク(後の代表監督)によると、アフリカにルーツを持つ黒人選手のポジションは慣習的にDFと決められていたという。それをアタッカーにも起用するようにしたのが1990年代だった。黒人FWもいたとはいえ、優れたパワー、スピードを守備の「保険」とする傾向が強かったのだ。

 マルセル・デサイー、パトリック・ヴィエラ、クロード・マケレレらのデュエルの強さで奪い取り、ティエリ・アンリやニコラ・アネルカの速さで攻め込む。強さ、速さ、高さ、運動量といったフィジカル能力を組み合わせ、攻守に強度の高いスタイルを確立していった。

 それは現在のウパメカノ、マヌ・コネ、エムバペ、オリーセたちにも、そのまま受け継がれている。高い身体能力に裏打ちされた個の力は、今やブラジルを上回って世界最高水準に達している。いわばサッカーの資源国であり、その地位は当分揺るがないだろう。

 今大会で足りなかったのは、ジネディーヌ・ジダンやアントワーヌ・グリーズマンが担ってきた"接続点"になる選手だが、オリーセやラヤン・シェルキが経験を積んで、さらに大きな存在になっていくはずだ。

 スペイン戦で1対1を作れなかったのは、能力よりも機能性の問題だった。同数守備へ移行する手順がはっきりせず、それができた時はボールを奪えていても、できない場面は少なくなかった。ここを改善できれば、現状でもスペインに勝つことは可能だったかもしれない。

 フランスの特徴からすると、1対1にしない方向性よりも、1対1にするほうへ特化するのが得策だと思う。国内にはオールコートのマンマークでチャンピオンズリーグを連覇した、パリ・サンジェルマンというクラブもある。やるべきことは、すでに決まっているのではないだろうか。

著者プロフィール

  • 西部謙司

    西部謙司 (にしべ・けんじ)

    1962年、東京生まれ。サッカー専門誌「ストライカー」の編集記者を経て2002年からフリーランスに。「戦術リストランテ」「Jリーグ新戦術レポート」などシリーズ化している著作のほか、「サッカー 止める蹴る解剖図鑑」(風間八宏著)などの構成も手掛ける。ジェフユナイテッド千葉を追った「犬の生活」、「Jリーグ戦術ラボ」のWEB連載を継続中。

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