フランス、どこよりも正統的な攻撃サッカーで決勝へ。日本代表は「美しい敗者」モロッコを目指せ (2ページ目)
【果敢に打って出たモロッコ】
手を打ったのは前半21分。最終ラインを統率した主将のロマン・サイスを下げ、中盤にセリム・アマラーを入れ、布陣を5-2-3から4-3-3へ変更した。それは怖がらずに前進せよという号令そのものだった。
前半29分、スタジアムに備え付けのスクリーンに表示されたボール支配率はフランス37%に対しモロッコ52%(11%は中間)。モロッコが布陣変更を機に、あるいはその前から反撃ムードを全開にしていたことが判る。
スペイン戦は、PK戦には勝利したが、全体的にはよく耐えたという印象だ。ポルトガル戦(準々決勝)も同様。言うならば守備の強さを見せた試合だ。だが大会前、スペイン、ポルトガルよりわずかに下馬評の高かったフランスに対しては、それ以上に攻めた。「フランス何するものぞ」と、果敢に打って出た。
モロッコはフランスの元植民地だ。スタジアム行きのバスで一緒になったモロッコサポーターは、フランス語を普通に喋っていた。監督会見もフランス語で行なわれる。日本がそういう立場に置かれたことがないので、モロッコ人がフランスに対してどんな思いでいるかは知る由もないが、モロッコの存在感を発揮する時だと、一致団結したことは確かだった。
スタンド風景を見れば一目瞭然。モロッコサポーターの数が万を超えていたのに対し、フランスサポーターはその10分の1程度。フランスは欧州にあってはスペイン、イタリアなどとともに代表チームを応援する気質が低い国として知られるが、ここまで差がつくと、ピッチ上のプレーに影響が出ても不思議はない。
もっとも、赤と緑のレプリカユニフォームに身を包んだモロッコサポーター全員が、モロッコ人だったわけではない。シリア人もいれば、サウジアラビア人もいた。エジプト人もいたし、もちろんカタール人もいた。アラビア語を話す人たちが、総出でモロッコを応援していたのだ。モロッコの健闘を語る時、このホームの利を外すわけにいかない。
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