板倉滉は森保采配の犠牲者 イラン戦必然の敗北にその指導スタイルを今後も無条件で支持するのか (4ページ目)
【板倉滉はこの試合の犠牲者】
日本にとって最大の敗因は、イランの守備変更によって戦況が大きく相手に傾き、戦術が機能不全に陥っているにもかかわらず、何の修正も加えられなかった森保一監督のベンチワークだった。少なくとも、数的同数になってビルドアップに苦しんでいるのだから、CBを3枚にするだけでも相手は一度リセットせざるを得なくなるはず。しかも、この試合の左SBには3バックの左を得意とする伊藤がいたのだから、交代カードを切らずともそれは可能だった。
しかし森保監督は、ハーフタイムを除き、基本的に試合途中の戦術変更はしない。試合中に起きた不測の事態に対しては、選手の工夫や頑張りを信じて見守り続ける。それはカタールW杯前も含めて一貫したスタイルなので、そこに驚きはない。だが、それを考えればやはり今回の敗北は必然であり、今後も同じことが起こり得ると覚悟するしかないだろう。
そういう意味では、コンディション的な問題もあっただろうが、この試合の戦犯扱いを受けた板倉は犠牲者とも言える。前半と後半で戦況が大きく変わるなか、戦術的劣勢のしわ寄せはCB板倉に及んでしまった。個人の力だけでは、どうしようもない部分があった。
結局、森保監督の指導スタイルを無条件で支持するJFA(日本サッカー協会)が変わらなければ、日本代表も変わらない。しかしながら、4年前のアジアカップ決勝と同じ轍を踏んだにもかかわらず、今回の敗退劇を受けても何かが変わる気配はまったくない。
それが、満身創痍のイランに完敗した森保ジャパンの現在地である。
著者プロフィール
中山 淳 (なかやま・あつし)
1970年生まれ、山梨県出身。月刊「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部勤務、同誌編集長を経て独立。スポーツ関連の出版物やデジタルコンテンツの企画制作を行なうほか、サッカーおよびスポーツメディアに執筆。サッカー中継の解説、サッカー関連番組にも出演する。近著『Jリーグを使ってみませんか? 地域に笑顔を増やす驚きの活動例』(ベースボール・マガジン社)
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