板倉滉は森保采配の犠牲者 イラン戦必然の敗北にその指導スタイルを今後も無条件で支持するのか (2ページ目)

  • 中山 淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi

【リズムを徐々に失っていった前半】

 ただ、イランにとっては日本にボールを握られるのは想定の範囲内。イラクやバーレーンのように、躊躇なく前線にロングボールを供給することで日本が得意なプレスを回避すると、中央エリアのスペースにボールが入ったところで回収を試みて、カウンターに転じやすい戦況に持ち込もうとした。

 この試合におけるイランのロングパスは、314本中65本で全体の20.7%を占めた。グループリーグのUAE戦(○2-1)のロングパスが563本中43本(7.6%)だったことを考えると、その作戦は明らかに意図的だったと見ていい。退場者を出して延長PKにもつれこんだラウンド16のシリア戦でさえも、724本中91本(12.5%)だった。

 とはいえ、日本にとっては、バーレーン戦でロングボール対策は経験済みだ。しかし、前線のターゲットマンにロングボールを入れて起点を作ろうとしたイラクやバーレーンと違い、イランはロストしてもカウンターを受けるリスクの少ないウイングや、DFラインの背後へボールを供給。日本のDFラインを下げさせることが、主な目的だったのだろう。

 同時に、日本のビルドアップ封じも実行した。その際、1トップ下の14番が遠藤航、左ウイングの21番(モハマド・モヘビ)が毎熊晟矢、右の7番(アリレザ・ジャハンバフシュ)が伊藤洋輝へのパスコースを遮断する役割を担い、最前線の20番は冨安健洋に圧力をかけて得意のパス供給を塞ぐための立ち位置をとった。

 そうなると、ビルドアップ時に浮いてくるのが右センターバック(CB)の板倉滉になる。実際、前半の板倉は先制するまでに日本が記録した前線へのくさびの縦パス3本をすべて供給。敵陣にボールを持ち運ぶシーンも目立ち、7分にはフリーで敵陣にボールを持ち運んでこの試合のファーストシュートを記録している。

 結局、左サイドから中央の上田綺世にくさびを入れた守田英正が、ワンツーリターンからのドリブル突破で先制ゴールを決めた日本は、前半のボール支配率で58.8%を記録。ただし、立ち上がり5分が72.1%、15分が66.9%だったため、次第にイランがボールを握れる状況に変化し始めていたことは確かだった。

 リードはしていてもリズムは失いつつある。そんな前半の終わり方だった。

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