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仙台育英に150m級のホームランを放つ超スラッガー 選抜優勝の横浜高のエースと元チームメイトの高田庵冬とは何者か?

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

 身長182センチ、体重90キロ。右打席に入っても、三塁キャンバスに立っても、そのたくましい体躯は目を引く。仙台育英3年の高田庵冬(あんと)は、高校通算28本塁打(5月28日現在)をマークする逸材である。

 仙台育英の須江航監督は「今までの教え子のなかでも飛距離は一番」と明かし、猿橋善宏部長は「仙台市民球場で150メートル級のとんでもないホームランを打ったこともあります」と証言する。スイングスピードはチームトップの157キロを計測した。

仙台育英のスラッガー・高田庵冬 photo by Kikuchi Takahiro仙台育英のスラッガー・高田庵冬 photo by Kikuchi Takahiro

【ケガをしない丈夫な体と人間性】

 右投右打の強打の内野手は、プロ側の需要も高い。それだけに、高田の注目度はもっと高まってもいいように思える。その一方で、高田にはクリアすべき明確な課題がある。須江監督はもどかしそうな口調でこう語った。

「彼はタイミングの取り方に難があって、本来ならとらえてほしいボールが少しズレてファウルになってしまうことが多いんです。決定力という点で課題があるのは確かです」

 昨秋以降、高田が主に任されている打順は6番で、昨秋に守ったのは一塁だった(今春は三塁)。中軸ではなく、守備に難がある選手となると、必然的にスカウト陣の見方もトーンダウンする。だが、須江監督は高田の類まれなポテンシャルについて力説する。

「冬に三塁を練習したら、こちらが思っている以上に上達したんです。最初は『就活』のための三塁転向でしたが、今ではちゃんと戦力として見込めます。そして何より魅力なのは、あの体でも動けること。足が速いので、上の世界ではセンターもできるはずです。ケガをしない丈夫な体、自分が決めたことをやり切れる人間性もあります」

 シートノックや打撃練習での高田のパフォーマンスを見て、須江監督の言葉にうなずくしかなかった。攻守とも精度は今ひとつながら、ハマった時のプレーは超高校級。好意的に解釈すれば、「鍛えがいがある選手」だろう。

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著者プロフィール

  • 菊地高弘

    菊地高弘 (きくち・たかひろ)

    1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。

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