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仙台育英に150m級のホームランを放つ超スラッガー 選抜優勝の横浜高のエースと元チームメイトの高田庵冬とは何者か? (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

 もっと練習したいという気持ちになりたい──。そんな言葉を聞いたのは、初めてのような気がする。いくら指導者から取り組む姿勢を認められても、高田本人にとってはまだ納得できる次元ではないようだ。

 冬場は硬かった股関節の柔軟性を改善するため、地道にストレッチに励んだ。内野ノックを徹底的に受け、三塁守備に手応えを得た。だが、打撃面では自分の理想像には遠く及ばない状況が続いている。

「理想としているのは、『ここぞの場面で打つ、頼れる4番』です。でも、自分には確実性がなくて。実力をつけて、上位を任されるバッターになっていきたいです」

【足を上げて打てる打者になりたい】

 今年の仙台育英には、ハイレベルな強打者がひしめいている。U−18日本代表候補に選ばれた強肩強打の捕手・川尻結大(ゆいと)や、広角に強烈な打球を弾き返す左打者の佐々木義恭、今春にかけて急成長した和賀颯真、田山纏(まとい/2年)も力強い打球を放っている。高田は厳しい競争のなかで、首脳陣からの信頼を勝ち取らなければならない。

 現段階では左腕の吉川陽大(あきひろ)とともに、プロ志望届を提出する意向を示している。確実性を向上するため、「タイミングの取り方が毎回バラバラにならないように」と練習に取り組んでいる。

 高田の打撃は、左足を上げてボールを呼び込む。タイミングをとるのが苦手な打者の多くは、ノーステップ打法など動作の小さな打ち方に変えようと考えるのではないか。そう尋ねると、高田はうなずきながらこう答えた。

「昨秋の東北大会はノーステップで臨んで、ホームランを打てました。このままでいいかな......と思ったんですけど、自分はそこで収まりたくない。目指している岡本和真さん(巨人)や鈴木誠也さん(カブス)みたいに、足を上げて打てる打者になりたいなと。苦手なことから逃げるんじゃなくて、成長していきたいんです」

 その言葉に、高田の芯の強さが滲んでいた。

 屈強な肉体や豪快なプレースタイルとは裏腹に、取り組む姿勢は謙虚にコツコツ。寓話『アリとキリギリス』でいえば、間違いなくアリタイプだ。勝手なこじつけに過ぎないが、アリは英語で「ant(アント)」という。

 高田庵冬が地道に取り組んだ末に、どんな世界が拓けるのか。ロマンの詰まった未完のスラッガーは、多くの人間を集める可能性を秘めている。

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著者プロフィール

  • 菊地高弘

    菊地高弘 (きくち・たかひろ)

    1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。

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