【ドラフト秘話】メジャー挑戦の大谷翔平を強行指名→日本ハム入団も栗山英樹は「全然喜べない」 (3ページ目)

  • 元永知宏●文 text by Motonaga Tomohiro

【二刀流は日本野球のためでもある】

──入団に際して、大谷に投手と打者の二刀流を提案したのはファイターズだった。栗山は「誰も歩いたことのない、大谷の道を一緒につくろう」というメッセージを贈り、高校卒でのメジャーリーグ挑戦を表明していた大谷は、最終的にファイターズ入団を決断する。プロ1年目の2013年の開幕戦で8番・ライトで先発出場を果たした(2安打1打点)大谷は、ルーキーイヤーに投手として3勝(防御率4.23)、打者として打率.238、3本塁打、20打点をマークした。

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 翔平は、自分の体がどうこうよりも、目の前の試合に勝ちたいという選手。こちらが抑えないと、どんどん試合に出てくる。まだ18歳で体もできあがっていないから、絶対に壊してはいけない。こちらでコントロールすることを心がけました。

 私たちは、「翔平なら二刀流ができる」と信じていました。はじめは否定的な意見もたくさんありましたが、彼がプレーすることでそういう声が出なくなった。やっぱり、あいつがすごいんです。本当によくやりました。2023年のロサンゼルス・ドジャース移籍の際には1000億円もの大型契約を結ぶほどになりましたからね。

 翔平の二刀流を進めることは本人のためでもありましたけど、チームとしても必要でした。エースと四番打者の役割をひとりでやってくれるわけですから、こんなに頼りになる選手はいません。

 ただ、二刀流をすることで、ほかのチームメイトに影響があったのは事実です。ローテーションがずれる投手もいたし、翔平に出場機会を奪われる選手も出てきました。「特別扱い」によってチームが揺らぐことも想定しましたが、私はあまり気にしませんでした。なぜなら、「大谷翔平に二刀流をやらせる」という大義があったから。

 翔平が二刀流で活躍することは、日本の野球のためである。本人のためでもあるし、ファイターズが勝つためでもありました。チームに波風が立ったこともあったけど、大義の前では何ともない。なにより、彼が自分のプレーでみんなを黙らせたというのが大きかったですね。誰に何を言われても「やる!」という強い気持ちを感じました。


栗山英樹(くりやま・ひでき)/1961年生まれ。東京都出身。創価高、東京学芸大学を経て、84年にドラフト外で内野手としてヤクルトに入団。89年にはゴールデングラブ賞を獲得するなど活躍したが、1990年にケガや病気が重なり引退。引退後は野球解説者、スポーツジャーナリストに転身した。2011年11月、日本ハムの監督に就任。翌年、監督1年目でパ・リーグ制覇。2016年には2度目のリーグ制覇、そして日本一に導いた。2021年まで日ハムの監督を10年務めた後、2022年から日本代表監督に就任。2023年3月のWBCでは、決勝で米国を破り世界一に輝いた

  栗山英樹の思考 若者たちを世界一に導いた名監督の言葉

挑戦し続けた栗山監督の熱いメッセージ集、刊行!

 栗山英樹監督が語った心に残る「言葉」とともに、監督の熱い「思い」をお届けする新刊書籍です。 2023年の第5回WBCでは、大谷翔平選手ら日本代表選手たちの素晴らしい活躍もさることながら、若い選手たちを率いて優勝に導いた栗山監督の「監督力」ともいえる手腕が大いに話題になりました。

 本書では、栗山氏がファイターズ監督、侍ジャパン監督としてチームを率いた2012年~2023年に取材や記者会見などで語った印象的な「言葉」を収録。 それらの「言葉」とともに、栗山監督の「選手を育てる力」や「人の能力を見出す力」に迫ります。 また、1983~1990年のプロ野球選手時代、2012~2021年のファイターズ監督時代、2021~2023年に「侍ジャパン」監督として挑んだWBCでの戦いを栗山氏が振り返って記した文章も収録します。

 さらに、読書家として知られ、様々なジャンルの書籍を人生の指南としている栗山氏が、自身の愛読書と、人に薦めたい書籍を紹介する「栗山英樹の本棚」も必見です。 組織づくり、選手の育成、人はどう生きるのか、仕事とどう向き合うのか。 栗山氏が語る「言葉」の数々から、諦めず挑戦し続けた監督の熱い「思い」をぜひ、感じてください。

【CONTENTS】

●栗山英樹語録

第一章「勝利への原動力」

第二章「夢を信じる」

第三章「諦めない、やり尽くす」

第四章「侍ジャパン、世界一へ」

●栗山英樹の思考

・1983-2012年 ドラフト外入団、現役引退、ファイターズ監督就任へ

・2012-2021年 ファイターズ日本一へ! 大谷翔平の伝説が始まる

・2021-2024年 WBC世界王座奪還、そして日本野球の未来へ

●栗山英樹の本棚

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著者プロフィール

  • 元永知宏

    元永知宏 (もとなが・ともひろ)

    1968年、愛媛県生まれ。 立教大学野球部4年時に、23年ぶりの東京六大学リーグ優勝を経験。 大学卒業後、ぴあ、KADOKAWAなど出版社勤務を経て、フリーランスに。著書に『荒木大輔のいた1980年の甲子園』(集英社)、『補欠の力 広陵OBはなぜ卒業後に成長するのか?』(ぴあ)、『近鉄魂とはなんだったのか? 最後の選手会長・礒部公一と探る』(集英社)など多数。2018年から愛媛新聞社が発行する愛媛のスポーツマガジン『E-dge』(エッジ)の創刊編集長

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