山本由伸・若月健矢のオリックスバッテリーが明かす阪神打線封じの秘策「あの球はたぶん頭になかったんだと...」 (3ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke

 最速159キロのスピードボールを誇る山本だが、本人が語るように、1試合のなかで投げるストレートの割合は平均で半分に満たない。言い換えれば、カーブやフォーク、カットボールをうまく織り交ぜながら、すべての球を勝負球にできるのが持ち味だ。その真髄を見せたのが、4対1で迎えた7回だった。

 今シリーズで好調を維持する先頭打者の8番・木浪に対し、初球はカーブが抜けて外れると、フォーク、ストレートで追い込み、4球目は外角低めのフォークを振らせて三振。つづく9番・坂本誠志郎には初球は外角低めのカットボールで空振り、2球目はカーブが外れ、3球目はフォークがファウル。そして4球目は153キロのストレートを真ん中に投げ込み空振りを奪った。

 二死からから1番・近本、2番・中野拓夢にいずれもフォークを打たれて一、二塁となり、打席に迎えたのは3番・森下翔太。ここまで3三振のルーキーに対し、初球は真ん中低めに落ちるフォークでストライク。つづく2球目、今度は内角高めに153キロのストレートを投げ込むと、セカンドフライに打ちとった。フォークとストレートで高低差をうまく使い、ルーキーに格の違いを見せつけた格好だ。

「7回くらいにベンチ裏で球数を数えている時に『(今日は球数の)制限ないよ』と言われました。(中嶋聡監督から?)はい。ちょうど通りかかって。冗談半分ですけどね」

 山本は8回を三者凡退で抑えると、9回もマウンドへ。合計138球を投げて、9安打を打たれながらも日本シリーズ記録の14三振を奪い、1失点で完投勝利を飾った。

「すごくいい感覚を取り戻せましたし、これはいけるなと思ったので、どんどん投げ込むことができました」

 もし次のイニングがあっても続投できるのでは......と思わされるほど、尻上がりに調子を上げていった。

 山本自身にとって、日本シリーズ5度目の先発で初勝利。今シリーズを3勝3敗のタイにしたオリックスにとって、リリーフ陣をひとりも使わずに最終戦へ持ち込めたのは大きい。山本にそう聞くと、頷いたあとにこう答えた。

「そうですね。ブルペンにはすごくいい投手が多いですし、今日投げたとしても2連投なのでいつもどおりかなと思いますし、明日はとにかくみんなで気合を入れてやるだけです」

 オリックスは負けたら終わりのなか、勝利に導いたエースの熱投をどうつなげるか。白熱する今シリーズは、いよいよ最終決戦を迎える。

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