オリックス最強リリーフ陣が打たれたのはなぜか OB野田浩司が「継投策の是非」と「ピッチャー心理」などを解説

  • スポルティーバ●文 text by Sportiva

 日本シリーズ第5戦は、阪神が6対2でオリックスに逆転勝利し、対戦成績を3勝2敗として38年ぶり日本一に王手をかけた。

 阪神は4回表、先発の大竹耕太郎がオリックスのマーウィン・ゴンザレスにソロ本塁打を浴び、1点を先制される。さらに7回表には守りに2つの失策が出て1点を失い、リードを2点に広げられる。それでも打線は8回裏、オリックス先発の田嶋大樹のあとを継いだ山﨑颯一郎を攻めて、無死一、三塁のチャンスをつくると、1番・近本光司のタイムリーで1点を返し、一死二、三塁から森下翔太が2点タイムリー三塁打を放ち逆転。その後も3点を加えた阪神が一挙6点のビッグイニングをつくり勝利した。

 阪神の大逆転はなぜ起きたのか。阪神、オリックスでプレーした野田浩司氏に解説してもらった。

8回裏、阪神・大山悠輔にタイムリーを打たれ肩を落とすオリックス・宇田川優希 photo by Kyodo News8回裏、阪神・大山悠輔にタイムリーを打たれ肩を落とすオリックス・宇田川優希 photo by Kyodo Newsこの記事に関連する写真を見る

【甲子園独特の雰囲気に呑まれた】

 第5戦は先発投手のできがカギを握ると思っていました。オリックス先発の田嶋投手は、初回こそヒットと自らのエラーでピンチを招きましたが、なんとか無失点で切り抜け、そこから自分のペースで投げていました。田嶋投手は腕が長く、ボールの出どころがわかりづらい。それに昨日はストレートと変化球ともにすばらしく、2回以降は阪神打線を完璧に抑えていました。

 だからこそ、7回表に打席が回ってきた時も代打を送らず、田嶋投手を打席に立たせた。いけるところまで投げてもらうつもりだったと思うのですが、7回表にオリックスが1点を追加して、リードが2点差になった。それによって8回からの継投になったかもしれないですね。

 8回に登板した山﨑投手ですが、第3戦、第4戦はベンチに入っていませんでした。おそらく、何かしらのコンディション不良があったのでしょう。ただ第5戦はベンチに入ったということは、本人も首脳陣も大丈夫という判断で、投げられる状態にあったのは間違いないと思います。

 山﨑投手にとって不運だったのは、先頭の木浪聖也選手を内野安打とセカンドの安達了一選手の送球エラーで2塁までの出塁を許し、つづく代打の糸原健斗選手にヒットを打たれたこと。1つでもアウトをとっていれば、いつもどおりのピッチングができていたかもしれませんが、甲子園独特の雰囲気に呑まれてしまったというか、ストレート、変化球ともにボールが高かった。

 さらに近本選手にタイムリーを打たれ1点差。つづく2番の中野拓夢選手に送りバントを決められ、一死二、三塁となったところで宇田川優希投手にスイッチしました。三塁ランナーは俊足の植田海選手だったこともあり、内野ゴロでも1点の可能性があり、オリックスベンチとしては三振がとれる投手ということで、彼に託したのでしょう。その判断は間違っていなかったと思います。

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