山本由伸・若月健矢のオリックスバッテリーが明かす阪神打線封じの秘策「あの球はたぶん頭になかったんだと...」 (2ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke

「4回、5回くらいからすごく調子が取り戻せたので、そこからは思いきっていくだけでした」

 山本がそう話したように、序盤のピンチを凌ぐと尻上がりに調子を上げていった。4回にも一死一、三塁の場面を迎えたが、9番・坂本誠志郎は低めのフォークを3球続けて空振り三振。1番・近本には初球のストレートをライトに大きな当たりを弾き返されたが、森友哉がフェンス際で好捕した。ピンチで低めにフォークを集める集中力と、力のあるストレートは山本らしい姿だった。

「変化球もすごくいいボールが多かったのと、もともとそこまで真っすぐが多いわけではないので。いい感じに1試合を通してバランスをとれたかなと思います」

 初戦との大きな違いはカーブでカウントをとれ、勝負球にも使えたことだった。

【日本シリーズ記録の14奪三振】

 加えて、カットボールもうまく織り交ぜていた。ストレートより10キロ近く遅いカットボールは、ともすれば"半速球"になってバットに当てられるケースもあるが、この日はストレート狙いの阪神打線に有効だった。

 捕手の若月にそうした配球について聞くと、前回の反省を生かすことができたと振り返っている。

「前回はカーブを減らしてしまったけど、(今日は)どんどん使えました。今日に関してはけっこうスライダーも投げましたから。あの球はたぶん頭になかったんだと思いますし、それがよかったのかなと思います」

 スピンをかけて強く投げるという山本のカーブは120キロ台中盤から後半だが、この日は121キロの球もあった。三者凡退に抑えた6回の勝負球はいずれもカーブだった。

 初戦は制球に苦しみ、一度も勝負球として投じられなかったカーブだが、第6戦では試合前に位置づけをうまく整理できたと、若月は明かしている。

「試合前に『そんなに速くなくてもいいから、しっかりカウントだけはとっていこう』っていう話をしていて、カウントがとれていたので。2ストライク後とか、とくに。そこから(うまく使って)いけたのかなと思います」

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