【高校野球】千葉商大付を陰で支える現役看護師の大人マネージャー 「子どもたちの心と体の変化に気づく存在でありたい」 (4ページ目)
そしてもうひとつ、鳥海さんが特に力を入れているのが「広報活動」だ。具体的にはInstagramを通じで、選手やマネージャーのキラキラと輝く瞬間を日々、発信している。この取り組みには、チームの魅力を届け応援してもらえる存在になること、選手たちの高校野球人生の一部を映像や言葉で残すこと、そしてSNSを通じて"こっそり"選手を鼓舞するといった思いが込められている。
また練習中にふたりでおにぎりを握り、選手たちに食べてもらうようになったのは、菅谷さんのアイディアを鳥海さんが後押しして実現した。
「愛子ちゃんがやりたいと言うから、『どうしておにぎりを食べる必要があるのか、提案すればいいじゃん?』と話しました。たとえば、どういう具材を使えばタンパク質がプラスになるか。練習中におにぎりを食べる意味をまとめ、父母会に提案して費用を負担してもらえることになりました」
自分でやりたいことがあるなら、実現できるように動けばいい。"大人マネージャー"の鳥海さんは、自身の人生をまさにそう切り開いている。
10歳近く年下の高校生にも、少しでも自分の存在がプラスになればいい。そう考え、心がけるのは絶妙な距離感だ。
「最初はどこまで踏み込んでいいのかもわからないし、どう接していこうかと悩みました。でも子どもたちから繊細さや、いろんなことを成し遂げていく姿勢など、学ぶこともたくさんあります。先生たちはいろんな経験をしていますしね。私は、両者に中立な翻訳者的な役割であれたらいいのかなと。ここまでの温度感で入っていいところ、あえて見守るところを考えながら日々すごしています」
医師と患者の間で気を配り、健康回復を支えるのが看護師の仕事だ。"大人マネージャー"という独特な立場だからこそ、野球部の力になれることがある。
そう考える鳥海さんの後押しが千葉商大付を救ったのは、今年の春大会を控え、チームがどん底に沈んでいる頃だった。
著者プロフィール
中島大輔 (なかじま・だいすけ)
2005年から英国で4年間、当時セルティックの中村俊輔を密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『山本由伸 常識を変える投球術』。『中南米野球はなぜ強いのか』で第28回ミズノスポーツライター賞の優秀賞。内海哲也『プライド 史上4人目、連続最多勝左腕のマウンド人生』では構成を担当。
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