大谷翔平が戦い続ける「完全二刀流」への懐疑的な固定概念 その常識を封じ込める三者連続奪三振劇とさらなる成長の可能性
7月12日のジャイアンツ戦に先発し勝利に貢献した大谷 photo by Getty Images
後編:31歳・大谷翔平の現在地
大谷翔平がロサンゼルス・ドジャースでも二刀流選手としての道を歩み始めたシーズン前半。投手復帰後、打撃成績が低下したが、メジャーリーグに根付く"二刀流は無理"という固定観念とひとりで戦い続けるなか、打者としては大物ルーキーから本塁打を放ち、投手としては100マイルの速球を駆使して三者連連続奪三振劇で周囲を黙らせている。
【投手復帰後の打撃成績の降下にも泰然自若】
6月16日の投手復帰登板後、大谷翔平の打撃成績に変化が見られた。復帰時点で打率.300、OPS(出塁率+長打率)1.039と圧巻の数字を誇っていたが、その後は打率.276、OPS.988まで低下。依然として高水準だが、「1番・DH&投手」という"完全二刀流"での出場は負担が大きすぎるのでは――そんな問いを、しばしば受ける。それは、大谷が3度のMVPを受賞し、球界の顔となった今も、"二刀流は無理"という固定観念が球界やメディアに根強く残っているからだ。大谷は、ひとりでそうした常識と闘い続けている。
投手復帰が打撃に影響を及ぼしているのではないかと問われ、こう語った。
「打席で"すごく悪い"という感覚はないです。捉えたと思った打球がセカンドゴロになったり、ちょっとしたズレがある。不調の時って、そういう感じじゃないかと思う。逆に言えば、少しの感覚の違いですぐ戻ってくることもあるので、そこは練習で補っていくしかないかな」
そんな大谷が"魅せた"のが、7月8日のミルウォーキー・ブルワーズ戦だった。相手先発は注目の若手右腕、ジェイコブ・ミジオロウスキー(23歳)。身長201cmの長身から繰り出す100マイル(160キロ)超の速球は、リリースポイントが打者寄りで体感速度も速く、極めて打ちにくい。今季のメジャーデビュー戦では5回ノーヒットの快投で衝撃を与えた。
初回、大谷への初球は100.3マイルのフォーシーム。カウント2ストライクと追い込まれながらも、大谷は3球目のカーブを完璧にとらえ、中堅越えの先制ソロ本塁打を放った。2打席目は空振り三振、3打席目は四球。試合はミジオロウスキーが6回1失点、12奪三振の快投で勝利投手となったが、大谷も若武者の挑戦に一歩も引かなかった。
試合後、大谷は相手右腕について「どの球種もアグレッシブですばらしかったし、何より制球がよかったと思います」と評価。そのうえで「欲を言えば、2打席目(3回無死二塁)で最悪でも進塁打が打てていれば、2対0の(試合)展開もまた違ったものになったかもしれませんね」と、冷静に振り返った。打席内で感じる"ズレ"について問われるとこう答えている。
「今日の四球もそうですが、ボール球自体はしっかり見極められている。そういう打席が増えてくれば、自然とヒットにも近づいていく。ホームランも増えて、得点機会も増えていく。だからこそ、クオリティの高い打席をしっかりと積み重ねていきたいです」
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著者プロフィール
奥田秀樹 (おくだ・ひでき)
1963年、三重県生まれ。関西学院大卒業後、雑誌編集者を経て、フォトジャーナリストとして1990年渡米。NFL、NBA、MLBなどアメリカのスポーツ現場の取材を続け、MLBの取材歴は26年目。幅広い現地野球関係者との人脈を活かした取材網を誇り活動を続けている。全米野球記者協会のメンバーとして20年目、同ロサンゼルス支部での長年の働きを評価され、歴史あるボブ・ハンター賞を受賞している。

大谷翔平 (おおたに・しょうへい)
1994年7月5日生まれ。岩手県水沢市(現・奥州市)出身。2012年に"二刀流"選手として話題を集め、北海道日本ハムからドラフト1位指名を受けて入団。2年目の14年にNPB史上初の2桁勝利&2桁本塁打を達成。翌年には最多勝利、最優秀防御率、最高勝率の投手三冠を獲得...

