大谷翔平が戦い続ける「完全二刀流」への懐疑的な固定概念 その常識を封じ込める三者連続奪三振劇とさらなる成長の可能性 (2ページ目)
【なぜ大谷に続く二刀流選手が現れないのか?】
残念に思うのは、大谷が二刀流でこれだけスポーツファンを熱狂させ、野球の娯楽性を高めているにもかかわらず、彼に続く選手がなかなか現れないことだ。
5月、ロサンゼルス・ドジャースのディノ・エベル三塁ベースコーチと話す機会があった。長男のブレイディ・エベル内野手が、ロサンゼルス近郊のコロナ高校でプレーしており、MLBドラフトの1巡指名候補と見られていたからだ。実は今年のコロナ高校には1巡指名候補が3人もいた。そして7月13日(日本時間14日)のドラフトでは、セス・ヘルナンデス投手が全体6位でピッツバーグ・パイレーツに、ビリー・カールソン遊撃手が10位でシカゴ・ホワイトソックスに、そしてブレイディが32位でブルワーズにそれぞれ指名された。この3人はいずれも高校時代は二刀流で活躍していた。そこでエベルコーチに「息子さんがプロでも二刀流に挑戦する可能性は?」と尋ねたところ、彼ははっきりと答えた。
「それは考えていません。プロのレベルで二刀流を続けるのは本当に難しい。大谷翔平は唯一無二の存在です。将来的に、彼のような選手が現れる可能性を否定するつもりはありませんが、現実的には非常に大変です。ブレイディも高校では11勝0敗、防御率0.32という成績を残しましたが、私は『メジャーを目指すなら、どちらかひとつに絞るべきだ』と伝えました。彼もそれを理解していて、今はショートを中心にプレーしています」
父親として、息子により確実な成功を望むのは当然のことだ。だからこそ、メジャーリーグ機構と選手会が、大谷のような選手を"特別な例"で終わらせず、野球界全体の魅力を高めていくために、彼に続く才能を生み出す方策を本気で考えていくべきだと思う。今が千載一遇の機会だ。
しかしながら現実には、MLBのロブ・マンフレッド・コミッショナーと、選手組合のトニー・クラーク専務理事は、「収益分配」をめぐる攻防に追われている。現行の労使協定は2026年12月に失効するが、一部のオーナーは新協定でサラリーキャップの導入を強く求めており、これに対して組合側は断固反対の立場を崩していない。関係者の間では、労使交渉が決裂し、2027年シーズンがキャンセルされるのではないかという深刻な懸念も広がっている。そしてそうなれば大谷が32歳から33歳を迎えるシーズンが丸ごと失われることになる。その損失は、本人にとっても、野球界にとっても、そしてスポーツの歴史にとっても、計り知れないほど大きい。
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