大瀬良大地の夏の甲子園 清峰・今村猛に勝利し、花巻東・菊池雄星と激闘「200%の力を出せた」と完全燃焼 (2ページ目)

  • 田口元義●文 text by Taguchi Genki

 投げ合う相手が菊池というだけでアドレナリンが放出される。2日前までのコンディションがウソだったかのように、大瀬良は自己最速の147キロをマークするなどストレートは走り、5回まで3安打無失点と完璧なピッチングを披露した。

 試合が大きく動き出したのは、長崎日大が1対0とリードして迎えた中盤からだった。

 6回表に大瀬良とバッテリーを組む4番バッター・本多晃希のホームランでリードを3点差に広げたが、その裏、今度は大瀬良がつかまる。6回に2点を返されると、7回にもピンチをつくってしまったところでライトに回った。しかし、2番手の寺尾智貴も一死二、三塁からヒットで1点差とされ、なおも一、三塁からダブルスチールを許して同点に追いつかれた。

 この時の状況を大瀬良はこう振り返った。

「自分の体力が限界だったんでしょうね。ライトに移ってから緊張の糸が切れてしまったのかなと思います」

 1点を勝ち越した8回。無死一、二塁の場面で再びマウンドに立った大瀬良は、そこから満塁とピンチを広げてしまったところで佐々木大樹に走者一掃となるセンターオーバーのツーベースを打たれ、さらにスクイズで4失点。そのまま5対8で敗れた。

 センバツ優勝校に続き準優勝校も倒す番狂わせは起こせなかったが、大瀬良は最後の夏を満足して終えられたと胸を張る。

「県大会で(今村)猛に投げ勝って、甲子園では(菊池)雄星と投げ合えたのはいい思い出になりました。200%の力を出せました」


大瀬良大地(おおせら・だいち)/1991年6月17日、長崎県生まれ。長崎日大3年夏に甲子園に出場。高校卒業後は九州共立大に進み、2013年ドラフトでは3球団競合の末に広島に入団。1年目から開幕ローテーションに入り10勝をマーク。セ・リーグ新人王に輝く。17年は開幕から無傷の7連勝を記録するなど10勝を挙げ、チーム37年ぶりのリーグ連覇に貢献。18年は最多勝、最高勝率のタイトルを獲得し、リーグ3連覇の原動力となった。24年6月7日のロッテ戦で史上90人目のノーヒット・ノーランを達成した

プロフィール

  • 田口元義

    田口元義 (たぐち・げんき)

    1977年、福島県出身。元高校球児(3年間補欠)。雑誌編集者を経て、2003年からフリーライターとして活動する。雑誌やウェブサイトを中心に寄稿。著書に「負けてみろ。 聖光学院と斎藤智也の高校野球」(秀和システム刊)がある。

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