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「野球はもういい事件」の
ドラフト候補の今。恩師は信じて待つ (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kikuchi Takahiro

 結局、厳しい環境下で自分を支える原動力は「野球が好きか?」という根源的な問いに立ち戻ってくる。落合という選手はすばらしい才能に恵まれている。だが、この問いに即答できるだけの思いを感じたことはない。

 ましてや今年はコロナ禍という非常事態もあった。兵庫ブルーサンダーズも活動を休止した時期もあり、落合にとっては野球をやめるための口実はできていた。

 だが、8月14日、5カ月ぶりに会った落合は、折れてはいなかった。

「プロ(NPB)に行きたい気持ちは、変わってないっすよ」

 その時点で、実績らしい実績はほとんど挙げられていなかった。コロナ禍で活動がままならなかった時期の話を聞くと、落合は淡々とこう答えた。

「練習は全然できやん(できない)かったですね。個人で、家でできる範囲でやってました。体幹とか」

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 8月11日の和歌山ファイティングバーズ戦では、初先発のマウンドに上がっている。立ち上がりからバックのミスが続き、初回に3失点。計4イニングを投げ、5失点と乗り切れなかった。

 だが、落合は味方のミスにも「そんなん、何も思わないですね」と動じなかった。高校時代はチームメイトのエラーに露骨に表情に出していた時期もあったというが、3年生になってからは気にならなくなったという。

「エラーをして機嫌が悪なったところで何も変わらないし、無駄やなと気づいたんです。そう思うようになってから、エラーしても顔に出んようになりました」

 しかし、ドラフト会議まであと2カ月。落合に「焦りはありますか?」と尋ねると、「あるっすね」と意外な言葉が返ってきた。

「全然練習できてなかったし、全然レベルが低いので、このままでは行けやんと思います。レベルを上げたいです」

 ここまで技術的には高校時代から大きな成長はないと言っていい。だが、今のこの選手の焦点はそこではない。

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