2020.08.22

「無観客甲子園」の魔力と稀少なプレー。
異例の夏に記者は見た

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kyodo News

交流試合出場の強打者12人のスカウト評>>

「無観客の甲子園」はどのように見えるのだろうか──。それは興味がある反面、怖くもあった。

 8月18日に閉幕した「2020年 甲子園高校野球交流試合」は、原則無観客として開催され、無事に6日間の日程をすべて消化した。

 ブラスバンドの演奏や大観衆による歓声が聞こえなくなり、練習試合の延長のような緊張感のない雰囲気になるのではないか。そして、常日頃から甲子園がまとう「魔力」としか言いようがない吸引力が薄れてしまうのではないか。

100年を超える高校野球の歴史で、初めて開催された甲子園球場での交流試合 大会前にはそんな不安も抱いていた。だが、実際にコンコースから通路を抜け、巨大なオーロラビジョンを目の前にすると、やはり甲子園は甲子園であった。

 土、芝が敷き詰められ、整備の行き届いたグラウンドは一種の枯山水のように美しい。20年以上前の元球児ですら「ここでやりたかった」と思いを抑えきれなくなる、磁場が発生していた。

「甲子園はどんな場所でしたか?」という問いに、交流試合に登場した甲子園球児たちはこう答えている。

「キャッチャーから見た景色は、バックスクリーンがでかくて、ここが小さい頃から目指した場所なんだなと感じました」(吉安遼哉/大阪桐蔭3年)

「球場に入った瞬間に風が強く吹いていて、あとは広さにびっくりしました」(畑中未来翔/鳥取城北2年)

「最初に入ったときに広く感じて、すごく偉大な場所だなと。テレビで見ていたところに来たんだなと感激しました」(太田圭哉/加藤学園1年)

「立ってみないとわからない、もう一度立ちたいと思う場所でした」(川口龍己/山梨学院1年)

「マウンドに立って、本当にワクワクしながら投げていました」(阿部駿介/鶴岡東3年)

「甲子園に入った瞬間から、『また甲子園でできるんだ』と感動しました。バッティングではいい結果は出なかったと思うんですけど、甲子園で高校最後の試合がやれているという実感はできました」(黒澤孟朗/国士舘3年)