箱根予選会に挑んだ放送大学関西の舞台裏...妻子持ちの34歳、多忙の研修医ら選手に一斉メール「明日はみんな来られますよね?」 (5ページ目)

  • 和田悟志●取材・文 text by Wada Satoshi

【大会にその名を刻み「100点です」】

 彼らは、いくつものハードルを乗り越えて、ようやくスタートラインに立った。

 いや、号砲が鳴ってもハードルはまだあった。レースの途中には、8km(29分30秒)、12.5km(47分30秒)と関門があり、それぞれ時間内に突破しなければならない。さらには、レースは1時間24分0秒で打ち切られるため、制限時間内にフィニッシュしなければ、記録が残らないのだ。

「消極的な目標かもしれないですけど、完走したいです」(村上)

 本大会出場は無理だとわかっていても、自らのチャレンジとして完走を目指して彼らはスタートを切った。

 その結果はーー。

 最後のひとりが制限時間まで1分41秒を残してゴールにたどりつき、出場した10人全員がみごとにフィニッシュした。

 走り終えて、仲間を称える村上の表情は誇らしげだ。

「エントリーできた時点で、ほぼ達成できたと言えるんですけど、そのあとスタートラインに立って、最後まで走りきることができて、今日はもう100点です」

 57校中55位。たしかに箱根路は遠かった。だが、100回の歴史に、放送大学関西の名をしっかりと刻むことはできた。

 今回の予選会には史上最多の大学が参加した。13枚の切符をめぐる争いは劇的だったが、そのはるか後方を走るランナーたちにも、それぞれにドラマがあったーーそれを教えてくれたのが、放送大学関西の挑戦だった。

プロフィール

  • 和田悟志

    和田悟志 (わだ・さとし)

    1980年生まれ、福島県出身。大学在学中から箱根駅伝のテレビ中継に選手情報というポジションで携わる。その後、出版社勤務を経てフリーランスに。陸上競技やDoスポーツとしてのランニングを中心に取材・執筆をしている。

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