箱根予選会に挑んだ放送大学関西の舞台裏...妻子持ちの34歳、多忙の研修医ら選手に一斉メール「明日はみんな来られますよね?」 (3ページ目)

  • 和田悟志●取材・文 text by Wada Satoshi

【妻を説得して入学「人生の悔いを晴らす」】

 もともと放送大学関西には、関西で活動しているランナー仲間が集結しており、予選会を目指すに当たって、彼らの周辺のランナー仲間に声がかかった。

 外村もそのひとりだった。

「丹後駅伝には失礼ながらあまり興味はなかったんですが、村上と共に立ち上げメンバーである山口(雄也/4年)から連絡をもらって、箱根予選会に出られるなら入学するしかないやろ、と思いました。自分のなかでは即決でしたね。子どもが生まれて3カ月くらいのタイミングだったので、もちろん妻にも相談しました。放送大学は入学金や授業料は安いんですけど、学割はフルで活用できるんです。その点をアピールしました(笑)」

 家族の理解を得て、無事に入学。外村は大阪経済大の職員として情報システム課で働いており、放送大学では仕事にも役立つ情報コースで学んでいる。他のメンバーも「仕事に直結する学問を専攻している」と外村が言うように、「文武労働」を実践している。

 外村は、大阪・清風高時代に全国高校駅伝に出場した実績がある。かつては日本大で箱根駅伝を目指したが、本大会も予選会も走ることは叶わなかった。それでも、卒業後も一般ランナーとして走り続けていた。

「大学4年間で夢を叶えられず、人生に悔いを残していました。ただ、箱根駅伝は自分の人生で一番大きな存在だったので、もし箱根を走っていたら満足して、今も走っていなかったかもしれません」

 もちろん本大会出場が現実的ではないのは重々承知していたが、走り続けてきたからこそ、再び箱根駅伝にチャレンジするチャンスが巡ってきた。奇しくも、外村の母校の日本大、勤務先の大阪経済大と、一緒のレースを走ることになるのだが......。

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