夏合宿の地獄坂トレーニング。東海大の「5区山登り」は春日主将か (6ページ目)

  • 佐藤 俊●文・写真 text & photo by Sato Shun

 西田は真剣な表情でそう言った。

"山を登る"覚悟は半端ではできない。ましてや入学前から山登りを考えていた西田の覚悟は、なかなかのものだ。しかし、一緒に走った春日とは実力的にまだ大きな開きがあり、今年の箱根は現実的には難しいかもしれない。来年以降、西田が5区のスペシャリストになれば、東海大が安定した強さを発揮し、箱根を制するための大きな力になるだろう。仮に登ることができなくても、登りの練習を継続していれば地力がつき、昨年の館澤のように出雲駅伝(2区・区間2位)や全日本大学駅伝(3区・区間賞)で快走する下地を作れることになる。

 2人はワゴン車を降りると芝の上をゆっくりと歩き、クールダウンを始めた。177cm、59kgの春日の隣にいると西田のコンパクトさがより目立つ。スタイルがまったく異なる2人だが、箱根の山は彼らが担っていくことになるのだ。

 午後の練習、春日と西田は治療とケアに回り、女神湖往復のやさしいメニューだった館澤たちは霧ヶ峰高原バス停近くのクロスカントリーの練習に行った。

「ケガ人も少なく、天候にも恵まれ、4週間ぶっ通しの高地合宿ですが、ここまで順調にきています。これから選手個々の身体がどんな反応を見せ、どういう結果につながっていくのかわからないですが、まず、出雲でその成果を見せることができればいいですね」

 両角監督は自信に満ちた表情で、そう言った。

 今年は高地でトレーニングの負荷を平地並みに設定し、強度の高い練習を選手は乗り切ってきた。さらにウエイトの効果も個人差はあるが、いい方向で出始めている。両角監督の余裕の笑みは、夏合宿での手応えを感じているからのものだろう。

 選手も駅伝シーズンに向けて、それぞれが大きな収穫を得て、たくましく成長した夏だった。

(つづく)

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