夏合宿の地獄坂トレーニング。東海大の「5区山登り」は春日主将か (4ページ目)

  • 佐藤 俊●文・写真 text & photo by Sato Shun

 霧ヶ峰高原のバス停で折り返すと、残り3.2km。だが、ここからフィニッシュまでの登りが"地獄坂"だ。

「さぁ、ここからが本当の練習だぞ」

 両角監督の檄が飛ぶ。サングラスをしている春日の表情はうかがい知れないが、体があまり動いていないのでつらそうだ。実際、「早く終われ、早く終われ」とそればかり思って走っていたという。それでも粘って登り切った。

「54分39秒」

 西川雄一朗主務が大きな声でタイムを読んだ。春日は走り終えると腰を折り、呼吸を整える。落ち着くと「はぁー、キツかった!」とかすれた声を出し、ゼリー飲料を手に取った。

 西田はまだ緩いカーブを登ってきている。ピッチが上がらず、体が揺れ、根性だけで足を動かしているようだ。「酸欠っぽい感じですね」と春日が心配する。

「西田、ラスト!」

 春日が大きな声をかけると、ゴールになだれこむように西田がフィニッシュした。駐車場の地面に倒れ込み、しばらく起き上がれない。

「体が痺れている、やばい」

 西田は仰向けに倒れたままだ。高地は乾燥し、脱水症状になりやすいので西川主務が顔に水をかけ、意識を覚醒させた。しばらくして西田は「うぅー」とうめきながらロボットのような動きで起き上がり、ウエアを着替えてワゴン車に乗り込んだ。

 ワゴン車の中、回復した春日は冷静に今日の登りについて語ってくれた。

「今日は風がすごく強くて、冷たかったので途中で体が冷えて......。箱根でもそういうことがあると思うんですが、とにかくめちゃくちゃキツかったです。特に最後の1kmは風がすごくて、もう登れないって思いました」

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