夏合宿の地獄坂トレーニング。東海大の「5区山登り」は春日主将か (3ページ目)

  • 佐藤 俊●文・写真 text & photo by Sato Shun

 三上、館澤、松尾淳之介(2年)はウエイト、小林和弥(4年)、木村、塩澤はホテルから女神湖往復、そして春日と西田壮志(たけし/1年)は山登りの練習だ。

「大門峠の信号付近をスタートラインにするから、そこまでアップがてら走っていこう」

 原付バイクにまたがった両角監督が2人に声をかけた。風雨や気温の変化に耐えられるようにと防水ジャケットに長靴を履き、完全装備だ。これで15km、彼らに並走し、ラップを読み上げ、給水をサポート。そのうえ、各選手の性格に合わせて叱咤激励をする。誰にでもできる仕事ではない。

 山登りは大門峠の信号からビーナスラインを通り、車山高原を越え、霧ヶ峰高原のバス停で折り返し、霧ケ峰の頂上にあるチャップリンというレストランまで約15kmのコース。1414mの白樺湖から1820mの霧ヶ峰まで標高差400mを登り下りして走り切る。両角監督いわく「距離は短いけど、箱根によく似ている」とのことで、箱根駅伝5区の練習には最適のコースだ。

「やるぞ!」

 西田がやる気満々でスタート地点についた。気温24度、風が強い。両角監督の合図で西田がスタートし、1分後、春日が続いた。

 序盤、西田が軽快に坂を駆け上がっていく。蹴り上げが強く、テンポがいい。161cm、43kgという細く軽い体は山登りには有利だ。後ろから見ているとサイズ的にも走り的にも神野大地に少し似ている。だが、標高が高くになるにつれ、風が強くなり、細い体にダメージを与える。軽量級の西田にとって悪夢のようなコンディションだ。徐々にスピードが落ち、顔がゆがむ。スタートして7.5km付近でついに春日に追いつかれた。そのまま離されるかと思ったが、西田が喰らいつく。春日も引き離すほどスピードが上がらない。強く、冷たい風にてこずっている。

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