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ツール前半戦、まさかの展開。
34年ぶりのフランス人総合優勝なるか (2ページ目)

  • 山口和幸●取材・文 text by Yamaguchi Kazuyuki
  • photo by A.S.O.

「このステージが僕に向いていることは把握していて、調子がよかったので思いきってアタックした。単独になるとは思っていなかったが、区間優勝ばかりかマイヨ・ジョーヌも獲得できて言葉がないよ」

 アラフィリップはステージ優勝後にそう答えたが、そのあとにもうひと言、つけ加えた。

「選手のタイプとして、僕が総合優勝を期待されるのはどうかと思う」

 このコメントの真意は定かではない。過去にはこうしてマイヨ・ジョーヌを着用したことで弾みがつき、自信をつけて最後まで総合優勝を争った選手は数多い。今大会は優勝候補の数人がケガにより欠場していることから、地元ファンは1985年以来34年ぶりとなるフランス人の総合優勝を期待している。そのプレッシャーから解放されるため、自ら口に出したコメントなのか。

 そしてもうひとり、総合優勝を期待されているフランス人は、グルパマ・FDJのティボー・ピノだ。第9ステージを終えて首位はアラフィリップだが、ピノはトーマスやベルナルを上回る総合3位の位置につけた。

 2014年、当時24歳だったピノはツールで総合3位と新人賞を獲得した実績がある。ところがその後、スピードに対する恐怖症に陥り、2016年、2017年は最終日にパリまでたどり着くことができなかった。そして2018年は、ついに欠場した。

「それでも、たくさんの人の支えと効果的なカウンセリングのおかげで、精神的な病を克服することができた」

 29歳となった円熟期のピノに、フランス国民が期待しているのは言うまでもない。

 ツール・ド・フランスは開幕から10日連続でレースをこなし、舞台は第10ステージへ。迎えた休日前日、このステージが大いに荒れた。

 首位のアラフィリップは第1集団のなかでゴールし、マイヨ・ジョーヌを守った。だが、総合3位につけていたピノが、ここで後れを取ったのだ。トーマスやベルナルから1分40秒差。総合優勝争いから一気に後退した。

 また、ピノだけでなく、総合2位につけていたトレック・セガフレードのジュリオ・チッコーネ(イタリア)など多くの主力も、第2集団に取り残された。どうしてなのか? それは、チーム・イネオスとドゥクーニンク・クイックステップが集団を分断させるために横風を利用し、ペースアップしてピノらを置き去りにしたからだ。

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