ツール前半戦、まさかの展開。34年ぶりのフランス人総合優勝なるか

  • 山口和幸●取材・文 text by Yamaguchi Kazuyuki
  • photo by A.S.O.

 第106回ツール・ド・フランスが現地7月6日、隣国ベルギーのブリュッセルで開幕した。

 国際規定で定められた休息日2日を含む全23日間の戦いは、初日からの10連続ステージが7月15日に終了。絶対的な存在がいない今回の大会だが、周到な作戦で絶好の位置につけて山岳ステージに備える有力選手がいる一方、注目選手が思いもよらぬ遅れによって窮地に立たされている。

 最初の休息日を迎えたここまでの戦いぶりと、有力選手が暴れ始める後半戦の展望を現地から紹介したい。

ツール・ド・フランスはこれから険しい山岳ステージへと突入するツール・ド・フランスはこれから険しい山岳ステージへと突入する 2年連続2度目の優勝を狙うチーム・イネオスのゲラント・トーマス(イギリス)は、若手の成長株エガン・ベルナル(コロンビア)とのツートップという布陣でスタートした。

 個人としてはもちろん、自らが栄冠を手中にしたいだろうが、チームは「どちらかが優勝すればそれでよし」という考えだ。23日間の長丁場では、落車や不調など、さまざまなアクシデントに襲われることが多い。そのため、リスクを分散させることが、確実にマイヨ・ジョーヌを獲得するための正攻法だ。

 大会2日目には、ブリュッセルでキーポイントとなるチームタイムトライアルが行なわれ、初日に首位に立ったマイク・テウニッセン(オランダ)を擁するチーム・ユンボ・ヴィスマが平均時速57.657kmのトップタイムで優勝。20秒遅れの2位にチーム・イネオスが入り、まずまずの位置につけた。

 注目したいのが、21秒遅れの3位にドゥクーニンク・クイックステップが食い込んだことだ。チームには、前年の大会でステージ2勝と山岳賞を獲得したジュリアン・アラフィリップ(フランス)がいる。チーム・イネオスにとっては要注意の存在である。

 そのアラフィリップが続く第3ステージの終盤で独走を決めた。それによって、今年のツール・ド・フランスは動き始める。ステージ優勝はもちろんだが、前日まで31秒遅れの総合11位につけていたアラフィリップがここで首位に立った。

 アラフィリップは過酷なコースで抜け出し、ゴールまで逃げ切るタイプの27歳。「フランス自転車界のロックスター」を標榜し、存在感あふれるアクションで人気上昇中の選手だ。

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