宇野昌磨は異例の厳しいジャッジを乗り越えられるか 4回転の神、急成長の新鋭との争い (4ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

【鍵山優真は完全復活なるか】

 宇野、マリニン、シャオ イム ファの3人が完璧な演技をすれば、310点前後のハイレベルな優勝争いを繰り広げることになるだろう。そんななか、鍵山も、その3選手にミスがあれば表彰台に食い込める勢いを取り戻してきている。

 鍵山の武器は、GOE加点の高いジャンプと演技構成点の進化だ。NHK杯のSPでは4回転2本の完璧な滑りで、演技構成点は3項目すべてを9点台に乗せ、今季世界最高の105.51点をたたき出した。

 ただ、フリーはケガからの復活途上ということもあって4回転は冒頭のサルコウと次の4回転トーループの2本のみ。基礎点が1.1倍になる演技後半のジャンプもトリプルアクセルと3回転ルッツ+2回転トーループ、3回転フリップと、本来の鍵山の実力からみればかなり抑えた構成になっている。

 それでもNHK杯のフリーでは、後半のトリプルアクセルの転倒などの取りこぼしがなければ、プログラム全体の完成度もかなり高めていて、190点台後半に乗せられる可能性は大きい。

 彼らに続くのは2回目のGPファイナル出場となる三浦佳生(オリエンタルバイオ/目黒日大高)だが、自己最高は281.53点ともう一歩の状態だ。今季のフィンランド大会はSPでシットスピンが0点になるミスをしながらも93.54点を出し、90点台後半に乗せられる可能性はある。

 三浦のフリー自己最高は189.63点。今季のGPシリーズ2戦では冒頭に入れる予定だった4回転ループを回避していて、4回転4本の構成に挑戦してノーミスの滑りができれば、290点台後半も見えてくる。三浦は、宇野や鍵山に迫る足がかりをGPファイナルでつかんでおきたいところだ。

 GPファイナル6位進出のケビン・エイモズ(フランス)は世界選手権4位の実績はあるが、4回転はトーループだけでフリーでも1本の構成で自己最高は282.97点。完成された演技を楽しみたい選手だ。

 GPファイナル男子シングルは、12月7日にSP、9日にフリーが行なわれる。決戦は、まもなくだ。

著者プロフィール

  • 折山淑美

    折山淑美 (おりやま・としみ)

    スポーツジャーナリスト。1953年、長野県生まれ。1992年のバルセロナ大会から五輪取材を始め、夏季・冬季ともに多数の大会をリポートしている。フィギュアスケート取材は1994年リレハンメル五輪からスタートし、2010年代はシニアデビュー後の羽生結弦の歩みを丹念に追う。

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