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宇野昌磨は異例の厳しいジャッジを乗り越えられるか 4回転の神、急成長の新鋭との争い (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

【シャオ イム ファは急成長中】

 フランス杯でそのマリニンを破り、翌週の中国杯では宇野を破ったアダム・シャオ イム ファ(フランス)は、今季、驚くような進化を見せている。

 2020−2021シーズンにシニアに移行した彼は、ジュニア時代の2019年には福岡で開催された世界国別対抗戦に出場していて、トリッキーな動きと勢いのある滑りで一部には注目されていた選手。だが、当時はジャンプのミスも多く上位に入ることはなかった。

 しかし、昨季はフリーでサルコウとトーループ2本の4回転3本の構成をとり、フランス杯はノーミスで滑って自己最高の268.98点を出して優勝。ただ、NHK杯は5位にとどまり、昨季はGPファイナル進出を逃している。その後の大会も浮き沈みは大きかったが、SP、フリーともブノワ・リショー氏の振付けで独特な世界観を見せる魅力的な存在になっていた。

 そしてシャオ イム ファは今季、4回転ルッツを習得したことで大きく進化した。エッジを正確にアウトサイドに乗せて跳び上がるジャンプで、フランス杯のSPでは、+3.78点というGOE(出来ばえ点)評価を受ける。さらに昨季まで冒頭にしていた4回転トーループ+3回転トーループを後半に入れる構成にしている。

 そのSPの結果は、マリニンに0・51点差の2位。101.07点と100点台に乗せてきた。そしてフリーでは、4回転4本の構成をノーミスで滑り、マリニンに2.1点差をつける306.78点で逆転優勝を果たした。

 勝因のひとつに、リショー氏の振付けが3シーズン目になるなか演技構成点を上げてきていることが挙げられる。フランス杯の逆転勝利も、フリーの演技構成点でマリニンを3点以上、上回ったからこその結果だった。

 その翌週の中国杯にも出場すると、疲労があったのかSPは4回転トーループの転倒で宇野に14点以上差をつけられる発進だった。しかし、フリーをノーミスで滑って自己最高の207.17点を出す逆転勝利で、GPファイナルへトップ通過を決めた。ジャンプの確率を上げて安定感が増しただけでなく、合計も310点超えの可能性を見せる強力な選手に開花した。

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