ブッチャーがテリーの右腕をフォークで「えぐり抜きます!」。全日本プロレスの名実況アナが振り返るまさかの瞬間 (3ページ目)

  • 松岡健治●文 text by Matsuoka Kenji

テリーに見た「男のロマン」

 試合は14分40秒に、シークがレフェリーのジョー樋口に凶器攻撃をしたことによってファンクスが勝利。リーグ戦の優勝を飾った。試合後の表彰式では、右腕を吊った涙顔のテリーが画面に映し出された。倉持は「テリー・ファンク。男のロマンをいかんなく見せつけています」と表現した。

「"男のロマン"は咄嗟に出てきた言葉です。ただ、僕はプロレスをずっと実況してきて、リングで戦うレスラーから『プロレスはロマン』みたいなものを感じていたんです。だから、僕の中に『男のロマン』という言葉をいつか使ってみたいなという思いがありました。それがあの時、テリーが優勝した歓喜で涙する姿を見た時に『今だ!』と思って、無我夢中で実況したことを覚えています」

 試合後、解説を務めた『東京スポーツ』の山田隆からも「男のロマン」について「あれはいい実況だった。紙面でも使わせてもらうよ」と絶賛されたという。

「あの試合は、今も多くのプロレスファンが覚えているのではないでしょうか。それほど、壮絶で熱い、プロレスの魅力がぎっしり詰まった試合だったと今も僕は思っています」

(第2回:全日本の控室からブロディ、スヌーカ・・・「あっ! ハンセンだ!」。サプライズ登場の瞬間、実況の倉持隆夫アナは嘘をついた>>)

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