女子レスラー林下詩美、「ビックダディ三女」と呼ばれる葛藤。「本当の自分は見てもらえない」 (4ページ目)

  • 尾崎ムギ子●文 text by Ozaki Mugiko

 2019年1月、「フューチャー・オブ・スターダム王座」「SWA世界王座」「EVEインターナショナル王座」を戴冠し、デビューからわずか5カ月で4冠となる。しかしこの年、4月と9月に二度の骨折をしてしまう。

「毎日ヘコんで、セコンドについていても試合ができないことへの焦りがありました。私よりあとにデビューした飯田沙耶とか上谷沙弥が活躍し始めて、どんどん輝いていくのを見て、その間にみんなに忘れられてしまうんじゃないかとすごく不安でした」

 前回、林下を"最強レスラー"に指名した岩谷麻優は、彼女のことを「プレッシャーを表に出さないタイプ」と言った。この日、筆者は彼女と話をしてみて、確かにそうかもなあと感じた。「プレッシャーだった」「焦りがあった」と言いながらも、どこか自分を抑えるようなところがあり、感情があまり見えてこなかった。

 岩谷がもうひとつ、林下について言っていたことがある。「彩羽匠路線をいくかと思った」――。ショートカットでボーイッシュな彩羽のようなレスラーになるのではと、多くのファンも感じていた。林下自身も「男性的なカッコよさを目指していた」と話す。

 しかしある時から、彼女は髪を伸ばし始めた。それに伴い、段々と洗練された雰囲気をまとい始めた。きっかけはなんだったのだろうか。

「Snow Man(ジャニーズグループ)の宮舘涼太さんを見てからなんです。それまでは自分の中で、Qween's Quest(林下が所属するユニット)はとにかくクールでカッコいいイメージだったんですけど、それを自分で表現しきれない部分があったんですよね。でも宮舘さんを見てから、『この人、Qween's Questだ!』って衝撃を受けたんです」

 宮舘は「だて様」と呼ばれ、「セクシー、ロイヤル、美しく」をテーマに活動している。彼の気品ある立ち居振る舞いに魅了された林下は、自分が表現したいQween's Questはこの人かもしれないと感じた。そこから「クールに、ロイヤル、美しく」を自らのテーマにし、カッコいいだけでなく、いわゆる"女性的"な美しさも追求するようになったという。

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