「そんなことしていいの?」。赤いベルトを持つ林下詩美がさらに強くなるための課題

  • 尾崎ムギ子●文 text by Ozaki Mugiko

■『最強レスラー数珠つなぎ』女子レスラー編
「スターダムの逸材」林下詩美 後編 前編から読む>>

 デビュー直後から、数々のベルトを獲得してきた林下詩美。2020年11月15日、岩谷麻優を破り、悲願のワールド・オブ・スターダム王座を戴冠した。通称、"赤いベルト"だ。

「うれしさもあったんですけど、あの岩谷麻優からスターダム最高峰のベルトを取ったんだから、『これからは私がスターダムの新時代を作っていく。先頭に立つ人としてやっていかなきゃ』という気持ちでした。これからに向けての気合がすごかったです」

インタビュー中に笑顔を見せた林下 photo by photo by Hayashi Yubaインタビュー中に笑顔を見せた林下 photo by photo by Hayashi Yubaこの記事に関連する写真を見る この連載で、現在"白いベルト"(ワンダー・オブ・スターダム王座)を持つ中野たむは、スターダムのベルトについてこんなことを話している。「赤は技術のベルトで、白は感情のベルト」――。女子プロレスの魅力のひとつが、闘いに感情が出やすい点にある。であれば、「感情のベルトである白いベルトがスターダムの最高峰だと思う」と、中野は言った。

「いや、赤いベルトが最高峰ですよ。団体で一番強い人が取れるベルトです。でも、『白いベルトは感情のベルト』というのはわかる。中野たむとかジュリアとか、私とはまったく違うタイプの選手ばかりが取るような感じではありますね。"赤"はベルトを勝ち取りたいという気持ちが見える試合で、"白"は闘う人同士の感情やドラマが見える試合になっているかもしれない」

 2019年1月、林下はフューチャー・オブ・スターダム王座のベルトを返上した。理由は「赤白のベルトを狙いたいから」。その後、赤いベルトを含め、スターダムのベルトほぼすべてを獲得した林下にとって、どうしても手に入れたいのが白いベルトだ。しかし彼女自身、ひと筋縄ではいかないと考えている。

「私はほかの選手と比べても、感情が表に出にくいタイプなんですよね。中野たむとかは対戦相手が誰であっても全部の感情を出せる人なので、白いベルトを取るには私も全部を表に出して闘えるようにならなきゃいけないのかなと思います。私の中で、感情を出し切って全力で闘える相手は、まだ限られているんです」

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