「そんなことしていいの?」。赤いベルトを持つ林下詩美がさらに強くなるための課題 (4ページ目)

  • 尾崎ムギ子●文 text by Ozaki Mugiko

 赤いベルトを巻いている以上、自分がスターダムのトップ。試合に勝ち続けていくのはもちろん、スターダム、そして林下詩美という選手をたくさんの人に知ってもらいたい。「知ってもらえるように頑張ることが、今の私の仕事」と話す。

 特に女性や子供にプロレスを広めたいという。

「私が最初、プロレスにそんなにいいイメージがなかったように、今もそういう人が絶対にたくさんいると思うんです。プロレスのすばらしさを伝えたいですし、『こんなに楽しくて元気になれる、強くてカッコいい女子レスラーもいるんだよ』って、女性や子供たちに知ってもらいたいですね」

 この連載では「強さとはなにか?」を探っている。林下にとって、強さとはなんだろうか。

「結果を出す強さもそうなんですけど、リング上で誰よりも輝いていて、存在感のある人は強いと思います。私がファンの頃に見たプロレスラーは、私のつまらない生活も、楽しいと思わせてくれるような存在感があった。私もそういうプロレスラーになりたいです」

 林下が指名した次回の"最強レスラー"は、ジュリア。

「リング上で輝いていて存在感もありますし、発信力もある。スターダムに来たばかりの時(2019年10月までアイスリボンに所属)はブーイングのほうが多かったんですけど、今はそんなことをする人もいなくなった。カリスマ性のある選手です。感情をすべて出して闘えるのは、すごく羨ましい。私にないものをたくさん持っています」

 インタビューを終え、ふと、林下が注文したアイスロイヤルミルクティーに口をつけていないことに気がついた。慌てて飲むように促すと、「すみません......ガムシロップいいですか?」と言って、もじもじと3つ手に取った。「1つにしようかなと思ったんですけど、普段3つ入れるので、3つないとと思って」と照れ笑いを浮かべる。こういう時の彼女は、本当にいい顔をする。美味しそうに甘いアイスロイヤルミルクティーを飲む彼女を眺めながら、「リングにガムシロップを持ち込めば、感情をすべて出せるかもなあ」と、私はぼんやり考えた。

 キャリア2年10か月――。林下詩美はまだまだこれから、強くなる。

(ジュリアのインタビューにつづく)

【プロフィール】
■林下詩美(はやしした・うたみ)
1998年9月14日、静岡県湖西市生まれ。166cm、65kg。テレビ朝日系ドキュメンタリー番組『痛快!ビッグダディ』に、ビッグダディ三女として出演。高校卒業後、飲食の仕事をしながら妹たちの学費を払い終えたのち、スターダムに入門。2018年8月12日、後楽園ホールでデビュー。同年9月に「5★STAR GP」準優勝、11月に「ゴッデス・オブ・スターダム王座」を戴冠し、2018年度プロレス大賞新人賞を受賞。翌年以降も数々のタイトルを戴冠。2020年11月、岩谷麻優を破り「ワールド・オブ・スターダム王座」のベルトを巻いた。現在、V4。Twitter:@utami0914

【大会情報】

『TOKYO DREAM CINDERELLA 2021 Edition』

◆日程:2021年6月12日(土)

[5/19発売]TOKYO DREAM CINDERELLA 2021 Special Edition/東京・大田区総合体育館 – スターダム✪STARDOM (wwr-stardom.com)

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