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サッカー日本代表の歴史的勝利を喜ぶだけでは進歩なし 改善点が明確になったブラジル戦

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

 ブラジル戦の日本は、前半と後半で別のサッカーをした。前半は後ろを固めるサッカー。後半は高い位置からプレスを掛けるサッカーだ。前半はカテナチオ、後半はプレッシングと言い換えることもできる。

 カテナチオの誕生は1950年代。プレッシングの誕生は1980年代終盤だ。いずれも起源はイタリアだが、プレッシングが攻撃的サッカーを象徴する戦法として世界に伝播していくなかで、イタリア国内では揺り戻し現象が起きる。1990年代後半、カテナチオ(守備的サッカー)が復活し、プレッシング(攻撃的サッカー)と優劣を競い合うことになった。

 1997-98シーズンのチャンピオンズリーグでは、両陣営を代表するレアル・マドリードとユベントスがアムステルダムで対戦。攻撃的サッカーのレアル・マドリードが勝利したことで、この世界の流れは攻撃的サッカーに傾いていった。5バックと同義語の3バックは激減。攻撃的な4バックがスタンダードとなった。

 日本の前半の戦法はまさにカテナチオ。古典的なサッカーだった。3-4-2-1を5-4-1に変え、「穴熊」然と守りを固める日本に対し、ブラジルは一方的にボールを支配した。

 かつては世界的に、穴熊作戦が奏功して逃げきりが決まるケースがよく起きた。しかし攻撃的サッカーの台頭とともにその割合は減少。攻撃が進化したことで守り倒すことが難しくなったのだ。ゴールをこじ開ける力を持ついいストライカーが次々と誕生したこと。プレスが掛かりにくいサイドの特徴を活用したサイド攻撃が強力になったことなどがその大きな理由になる。

 前半のブラジルはさすがだった。穴熊を2度にわたりきれいにこじ開け、2-0とした。もう2、3点はいける。そんなムードで前半を終えた。

後半、次々と得点を決め、ブラジルに逆転勝利を収めた日本代表の選手たち photo by Kishimoto Tsutomu後半、次々と得点を決め、ブラジルに逆転勝利を収めた日本代表の選手たち photo by Kishimoto Tsutomuこの記事に関連する写真を見る ところが、後半に入ると日本は穴熊をやめ、高い位置からプレッシングに出る。するとブラジルは想定外とばかりに慌てた。

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著者プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

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