女子レスラー林下詩美、「ビックダディ三女」と呼ばれる葛藤。「本当の自分は見てもらえない」 (3ページ目)
現在は赤いベルトを4度防衛中 photo by photo by Hayashi Yubaこの記事に関連する写真を見る 2018年3月、スターダムに入門。憧れの紫雷イオとの練習が始まる。
「自分にも他人にも厳しく、プロレスに対して熱い方でした。できるまでとことん練習する。私の練習も、できるまでずっと隣で見ていてくれました。すごくうれしかったですね」
しかし間もなく、紫雷はWWEに入団するため、スターダムを退団した。
「結局、一緒に練習したのは2回だけ。最後に会った時、『私はイオさんと試合がしたくてスターダムに来たんです』と伝えたら、『なんとなくそんな気がしていました』と言われました。イオさんといつか試合をすることが、次の夢です」
7月にプロテストに合格し、8月12日、後楽園ホールでデビューが決まった。デビュー戦の相手はジャングル叫女。力が強く、パワーファイターとしてやっていきたかった林下にとって、いつかは倒さなければいけない相手だった。
迎えたデビュー戦。柔道黒帯の林下は、昨日まで練習生だったとは思えないパワーと技術を発揮。幼い頃から、見られることに慣れていたのだろう。堂々とした立ち居振る舞いもさすがだった。結果は15分時間切れ引き分けと大健闘。将来、必ず大物になる。そう誰もが確信した試合だった。
「緊張はまったくしなくて、とにかく『憧れのプロレスラーになれるんだ!』と思って、楽しくやれました。もちろん痛くて、『ヤバい!』と思った瞬間もあったんですけど、試合後にあらためてリングから客席を見た時、プロレスラーになったんだなという感動がありました」
その後、9月に「5★STAR GP」準優勝、11月に渡辺桃とのタッグで「GODDESSES OF STARDOM」優勝、「ゴッデス・オブ・スターダム王座」戴冠、12月に「ルーキー・オブ・スターダム」勝利。その年のプロレス大賞新人賞を受賞した。
絵に描いたようなスター街道。しかし次第に、葛藤が芽生えてくる。
「私がどれだけ頑張って結果を残しても、実力より『ビッグダディ三女』という見方をされてしまう。ビッグダディの名前が邪魔だったわけではないですが、本当の私を見てもらえないもどかしさはありました。名前負けしたくなくて、誰よりも練習しました」
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