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【箱根駅伝2026】予選会10位滑り込みの立教大、エース欠場の激震も「順位はよくないけど、次につながる」

  • 佐藤俊●取材・文 text by Sato Shun

10位で予選会を突破した立教大の選手たちは抱き合って喜んだ photo by Nikkan Sports/Aflo10位で予選会を突破した立教大の選手たちは抱き合って喜んだ photo by Nikkan Sports/Aflo

【エースが直前に左股関節を痛めて欠場】

「いや~、よくない貴重な経験をさせていただきました」

 立教大の髙林祐介監督は、苦笑いをして、そう言った。

 第102回箱根駅伝の予選会(1018日)、前回トップ通過の立教大は、最後の10番目にコールされた。11位の法政大との差は、わずか17秒。選手たちは泣き崩れ、最後の一枠にもぐりこんだ幸運を噛みしめた。エースの馬場賢人(4年)は、目を真っ赤にして「ホッとしたのと、ありがたい気持ちと、みんなに申し訳ない気持ちで、本当にいっぱいで......」と声を震わせた。

 レース前、立教大は大きく揺れていた。出走メンバーから馬場が外れたのだ。馬場は前回の箱根2区で区間7位と好走し、2月の日本学生ハーフマラソンで1時間0026秒の自己ベストをマークして2位。7月のワールドユニバーシティゲームズのハーフマラソンでも4位入賞するなどの実績を持ち、今回もタイムを稼ぐ重要な役割を担うはずだった。

 ところが、予選会の1週間前に左股関節を痛め、急遽、出場を取りやめた。チームにとっては大打撃だ。だが、"馬場不在"を全員でフォローしようと、國安広人(4年)キャプテンを中心にチームが結束した。

 立教大は、集団走というスタイルを取らない。選手それぞれの設定タイムを決め、それを目安に走る。終始、日本人の先頭集団でいい位置を確保して走っていたのが、原田颯大(3年)だった。

「夏合宿から調子が上がってきたので、自信を持って臨めました。監督からは、『馬場に頼ったらダメだよ。ちゃんと自分が変わるきっかけをつくろう。チャレンジしよう』と言われました。(レース後半の昭和)記念公園内でペースが上がることが予想できたので、そこで行くかどうか迷ったんですけど、チャレンジした結果がチーム内1位(全体20位)を取れて、予選突破につながったと思うので、そこの判断はよかったと思います。今回、自分自身をブレイクスルーするきっかけをつかめたと思います」

 原田は、表情を崩して、そう言った。

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著者プロフィール

  • 佐藤俊

    佐藤俊 (さとう・しゅん)

    1963年北海道生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、出版社を経て1993年にフリーランスに転向。現在は陸上(駅伝)、サッカー、卓球などさまざまなスポーツや、伝統芸能など幅広い分野を取材し、雑誌、WEB、新聞などに寄稿している。「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「箱根0区を駆ける者たち」(幻冬舎)、「箱根奪取」(集英社)、「箱根5区」(徳間書店)など著書多数。近著に「箱根2区」(徳間書店)。

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