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【箱根駅伝2026】日体大、伝統の「集団走」を支えた4年生の自己犠牲精神「まだ力のない下級生が多かったので...」

  • 杉園昌之●取材・文 text by Sugizono Masayuki

日体大のエース格・山崎丞(21番)は集団走の引っ張り役に徹し、チームに貢献 photo by Kyodo News日体大のエース格・山崎丞(21番)は集団走の引っ張り役に徹し、チームに貢献 photo by Kyodo News

10月18日の箱根駅伝予選会では10年連続出場中の法政大学が落選する波乱も起きるなか、5連覇を含む10度の優勝を誇る日本体育大学は肝を冷やしながら本戦の出場権をつかんだ。大学名が呼ばれたのは10枠中の9番目。継続中の記録では最長の78年連続78回目の本戦出場を決めた伝統校の底力とは――。

【11番目に呼ばれたときの言動も考えていました】

 結果発表を待つ約40分間は、気が気ではなかった。1位から順番に大学名が呼み上げられるたびに緊張感は高まり、事態は切迫していく。8位までにも入っていない。残りは2枠。95回大会の2019年にシード権を逃してから7大会連続で予選会に出場してきたが、今回ほど危機感を覚えたことはない。96回大会以降、3位、6位、3位、5位、4位、4位といずれも危なげなく突破を決めてきた。就任6年目の玉城良二監督は予選突破を信じつつ、最悪の事態も想定したという。

「11番目に呼ばれたときの言動も考えていました。どんな状況でも、きちっと礼をすること。報道陣にもしっかり対応し、応援者、支援者に挨拶も行かないといけませんから」

 9位のアナウンスを聞き、ようやく指揮官は静かに頭を下げた。待機テントの前に並ぶ選手たちは安堵した表情を浮かべる者もいれば、日本人選手2位(全体8位)と奮起したエース格の平島龍斗(4年)はぐっと目頭を押さえていた。伝統校の重圧は、周囲の想像を絶するものなのだろう。戦後混乱期の1949(昭和24)年から続く、連続出場の記録を更新した玉城監督は自らの心境について多くを語らなかったが、口元をふっと緩めた。

「ほっとしたというか、まあ、いろいろな感情がありました」

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