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【箱根駅伝2026】日体大、伝統の「集団走」を支えた4年生の自己犠牲精神「まだ力のない下級生が多かったので...」 (2ページ目)

  • 杉園昌之●取材・文 text by Sugizono Masayuki

【強みは四番打者がチームのために送りバントできるところ】

 ただ、苦戦を強いられながらも、エゴを捨て、チーム戦略の遂行に努めた選手たちをしっかり称えた。タイムを稼ぐために日本人先頭集団で走ったのは、エース格の平島と田島駿介(4年)のふたり。それ以外の出走メンバーは、例年のように夏合宿から入念に準備してきた「集団走」に徹した。主軸のひとりである主将の浦上和樹(4年)が故障の影響で欠場するなか、9人の仲間を先頭で引っ張ったのは前年度、箱根駅伝の2区を走った山崎丞(4年)だ。平島、田島と並び、3本柱のひとりとして信頼を寄せられている大黒柱である。

「本人も本音では、平島、田島と一緒に(個人走で)行きたかったと思います。でも、今回はこっちから引っ張り役を担ってほしいと言いました。山崎はペースメイクが非常にうまくて、焦らずにきちっと行けるので。みんなもよいリズムで走れますし、安心できるんです」

 自己犠牲精神を持つ4年生の存在こそが、日体大の伝統を支えているという。もともと山崎は誰よりも自己主張が強く、自他ともに認める目立ちたがり屋。1年時から箱根の1区で区間9位と好走したものの、2年時は故障を繰り返し、肝心の箱根も体調不良で欠場。「走れない時期は自分を見失っていました。自分勝手な行動を取ってしまい、先輩たちにも迷惑をかけたと思います」と本人も反省し、3年目以降は生まれ変わった。玉城監督のもとで心身ともにたくましくなり、今は日体大らしい最上級生になっている。指揮官は、その成長ぶりに目を細めていた。

「最初はやんちゃ坊主でしたが、今はいい兄貴分になっています。4年生としてお手本となり、後輩にゲキも飛ばしていますから。うちの強みは、山崎のような四番打者が、チームのために送りバントできるところ。彼は本当によくやってくれました」

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